2016年05月26日

ネガティブな感情体験とどう向き合うか

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 私はスクールカウンセラーとして小学校に勤務しています。休み時間の相談室には「相談」というわけではなく、なんとなくおしゃべりをしに来る、という子が意外と多いのです。
 他愛ないおしゃべりの中に、子どもの怪我の話があります。包帯や湿布を貼っていると、思わず「どうしたの?」とこちらから聞いてしまうからです。 「転んでぶつけた」。「サッカーの練習でほかの子とぶつかって」。「切っちゃったの、図工に時間に」等など。怪我の理由はさまざま。スクールカウンセラーが、痛みを想像して思わず眉をひそめて「痛そう」と言うと、なぜか少しうれしそうな顔をする子もいます。

 「痛い話」を聞きながらスクールカウンセラーが「痛そうな顔」をするほど、子どもたちは楽しそうになるのです。こちらは話から痛みを想像してしまい、大変な思いなのですが。子どもたちは、自分の話にスクールカウンセラーが反応してくれるのが楽しいのでしょうか。痛みを分かってもらえたと感じる部分もあるのでしょうか。スクールカウンセラーは、話を聞いて想像しながら、自然にその痛みやつらさに共感しようとしていたのだと思います。

 痛みに限らず、ネガティブな体験をしたとき、子どもがそれを乗り越えていくには、共感してくれる大人の存在が不可欠です。痛みやつらさを一緒になって味わってくれる大人の存在、「わかってもらえた」という体験を通して、子どもは安心感を得ることができ、つらい体験を乗り越えていけるのです。
  「痛いの痛いの飛んでけ!」 怪我をして痛がっているときによく言われるこのフレーズは、「痛みがそこにある」という前提です。このフレーズを大人が言ってあげることに効果があるのは、その痛みを一緒に味わってもらった上での「飛んでけ!」(乗り越える、我慢できる)というプロセスを意味しているからです。

 痛みを感じているときに「大丈夫!」と声をかけることがあります。元気づけるためや、痛みに対する耐性を育てるためです。しかし「大丈夫!」という声かけは、励ましになるのですが、痛みやつらさの存在を否定するニュアンスも含んでいるところがあるので、要注意です。言い換えると、子どもが体験している痛みやつらさの持っていき場を失ってしまう可能性も含んでいます。「痛かったよね」「怖かったよね」「悔しかったよね」。ネガティブな体験の存在をきちんと受け止めてあげた上で「大丈夫!」と言ってあげることによって、子どもの中のネガティブな体験を乗り越える力を育てていくことができます。

 子どもが感情を調整したり、感情に対する耐性を身につけていくためには、子どもが自分自身の感情の状態を知ることが必要ですが、そのためには、大人が『心』を使って、子どもの心の状態を推し量り、それを照らし返してあげるという過程がとても大切なのです。
posted by MSCOスタッフ at 22:11| オフィス外での活動

2016年04月28日

自分と向き合うことについて

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 趣味として写真表現の勉強をはじめた頃、「一般的な美意識ではなく、自分自身が美しいと感じるもの、面白いと感じるものを撮るのが写真表現だ」ということを繰り返し叩き込まれました。きれいな花を見れば、誰もが「きれいな花だ」と思いますし、美しい景色を見れば、誰もが「美しい風景だ」と思うものです。でも、それは、本当にその人が感じていることではなく、「きれいな花」「美しい風景」という記号化されたイメージを取り込んでいるだけ。そういうものを写真に収めたところで、それは、ただ「一般に美しいといわれているものだから写真に撮った」という撮影行為でしかなく、写真表現ではないのだということです。

 さて、そのように叩き込まれて自分独自の表現を求めてカメラを構えるわけですが、一般的な美意識を離れて、自分自身が美しい、面白い、と思う写真を撮ろうと対象物と対峙したときに、このもの(ひと)のここが面白い、と自覚することは、実は容易なことではありません。「何か心を惹かれる感じ」や「違和感」があればカメラのレンズを向け、ひたすら写真を撮り続けるしかありません。でも、それをプリントして形にしてみると、自分が何を見ていたのか、どんなものを面白いと感じるのかがぼんやりとわかってきます。
 さらに、目の肥えた写真家がその写真を見ると「あ、ここが面白かったんだね」とわかってくれたりする。自分ではぼんやりとしかわからなかった感覚が、他の人に見てもらうことで確認でき、きちんと形になることも多いのです。「そう。そこなんです」と共有できることの楽しさ。「人からわかってもらえること」のうれしさに心が躍る瞬間です。そういうことを繰り返していく中で、だんだん自分自身の撮りたいもの、自分自身の個性が見えてきたように思います。

 ひたすら写真を撮り続けてプリントすることを繰り返す作業は、なかなかしんどいところもあるのですが(特にフィルム写真は暗室作業があるのでたいへん)、それでも、自分の撮った写真を自分と一緒に面白がってくれる人がいることがうれしくて夢中で写真を撮り続けました。そして、「写真を撮り、見てもらうこと」を繰り返す中で私自身が思うようになったのは“人間というのは、自分を理解してもらいたい欲求が非常に強いのだな”ということです。
 これはおそらく、花や風景、人物をどうやったら上手く撮れるか、という一般的な『写真の撮り方教室』では感じなかったことではないかと思います。『写真表現』を突き詰める過程で見えてきたことなのです。

 人間という存在は、自身の個性を表現し、それを誰かにわかってもらいたい欲求があるのではないでしょうか。でも、そのためには、自分が何を見て何を感じているかを自覚しなくてはならない。つまり、自分自身と向き合わなくてはならないのです。
 花の美しさを誰かに伝え、共有できたとしても、“自分をわかってもらえた”と感じることはできないはずです。自分自身の独自な部分を自覚して、それを他者に伝えることを通じてしか、本当の意味で“自分をわかってもらえた”とは感じられないのではないでしょうか。「独自な自分」は、必ずしも他者から賞賛され、好かれるように感じられないかもしれません。でも、それが自分なら、受け入れていくしかないのだと思います。

 カウンセリングに来られる方の多くは、「人から受け入れてもらえないような自分は嫌だ」と言います。だから、そういう自分を隠して、あるいは、はじめから「いないこと」にして、人から受け入れられるように振る舞うのです。でも、自分からそのようにしていながら、一方で「誰もわかってくれない」とも言います。「本当は、自分のことをわかってほしい。でも、ありのままの自分では誰も受け入れてくれないだろう。それなら、人から好かれるような自分を演じている方がましだ」ということです。ただ、皆さんカウンセリングを受けに来られているわけですから、そのことが実はとても苦しいということなのです。

 自分自身と向き合うのは、確かに勇気がいることですし、苦しいものです。でも、自分と向き合い、欠点だらけの自分を自覚してそれを伝えることができたら、どこかにそういう自分を理解してくれる人がいるかもしれません。誰か1人でも理解してくれる人がいたら、それはどんなにかうれしいことでしょう。
posted by MSCOスタッフ at 17:09| 心理エッセイ

2016年02月26日

『ストレスチェック制度』義務化について

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  2015年12月から始まった『ストレスチェック制度』 。50人以上の従業員のいる全事業所にたいして義務化されました。
全体の流れは図のようになっています。
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(ストレスチェックの流れ(厚生労働省ウェブサイトより引用) クリックで拡大します

  図といってもなんだかやわかりにくいので、ポイントをご説明したいと思います。
  まず、Aの矢印のところ。ストレスチェック制度は、医療やメンタルヘルの専門家が実施することになっています。産業医をはじめとした医師や保健師、一定の研修を受けた看護師や精神保健福祉士です。そのために必要な手配や経費などは事業所が負担します。その点では、身体の定期検診のメンタル版とも言えます。
  次にBのところ。定期検診とはっきりと異なる点です。個人の情報の問題。ストレスチェックの結果は、事業所には報告されません。実施した専門家が情報を厳重に管理することが義務づけられていて、本人の同意無しには決して事業所に知らせません。
  Dにあるように、この制度の目的は、個々人が自分のストレス状態に気づくことを通して、セルフケアに意識を持ち、行動してもらう事だからです。
  また、Cの矢印にあるように、事業所はストレスチェックのデータから統計処理された全体の傾向を分析されます。ここから、事業所が抱えるストレス要因に目を向け、自らの改善目標を組み立てることが望まれています。過去、雇用者が被雇用者に定期検診の機会を用意することが当たり前になる社会の変化があったように、現代では社会全体のメンタル不調に対する意識が変わってきていることの表れとも言えるでしょう。
  そして大切なのは、高いストレス状態にある働く人へのケアですEの矢印にあるように、本人が希望すれば面接指導や就業上の調整が行われます。これは、あくまで本人の希望・申し出があってからのことですが、医師の面談指導を受けることを選べます。さらに必要に応じて、Fのように相談機関や専門医への紹介があります。
  本人に希望がない場合にも、高いストレス状態に対処するための情報や相談機関等の情報が提供されます。
  どうやら『ストレスチェック制度』の大きな目標は、個々人が自分のストレス状態に気付きセルフケアをすること、事業所が働く人のストレスを事業所の問題として捉えることにあるようです。私たち働く人としては、自分たちのココロの健康のケアに対して、事業所がひと役かってくれると捉え、かしこく活用したいものだと思います。
posted by MSCOスタッフ at 17:01| 心理エッセイ

2016年01月30日

全か無か思考

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 カウンセリングを受けに来られる方々の中によく見られる傾向に、「全か無か思考」があります。

 この「全か無か思考」とは、「all-or-nothing thinking」ともいいます。つまり、100%でなければ0と同じことだ、という極端な考え方のことです。「完璧主義」と言い換えてもよいかもしれません。

 たとえば「健康のため毎日仕事帰りに1駅前で電車を降りて家まで歩くのだ」と決めていたのに仕事が忙しくて疲れてしまい、つい億劫になって歩かなかった日が何日か続いたとします。そんなとき「また三日坊主になってしまった」「どうして自分はこんなに意志が弱いのだろう」と思ってがっかりしてしまい、「どうせ自分は何をやっても続かないのだ」とあきらめてしまう方は多いのではないでしょうか。

 でも、これから先ずっとできないかどうかはまだわかりません。仕事が一段落したら、気力体力が持ち直す可能性もありますし、そもそも「毎日歩く」という目標そのものを見直して「仕事が早く片付いた日だけ歩く」、「朝少し早く家を出て歩く」ことにするなど、本当は工夫次第でどのようにもできるはずです。

 本来の目標は「健康の維持、増進」なのですから、やり方を変えてもその目標が実現できればよいはずなのに、なぜ私たちは最初に決めた高い目標にこだわってしまうのでしょうか。それは、私たちの中に「万能感」というくせ者がいるからです。この「万能感」は、もともと私たちの中にある「何もかも思い通りになるはず」というファンタジーの残滓ではないかと思います。

 幼い頃、私たちの生きている世界はとても狭かったので、すべてが思い通りになるような錯覚を抱いていたのかもしれません。大人になるにつれて少しずつ、思い通りにならないこともあるとあきらめることを学んでいきますが、それでもどこかで「思い通りになるはず」という期待感を捨てきれずにいるのではないでしょうか。

 何かをやろうとするとき、私たちの中ではおそらく残滓であったはずの「万能感」がむくむくと大きくなり、「思い通りになるかもしれない」という期待感が生まれるのではないかと思います。周囲の状況が許さず、また自身のコンディションもありますから、そうそう自分が思ったようにはならないものですが、その思い通りにならないという事態が、思いのほか私たち自身を傷つけるようです。何度思い通りにならない状況を経験してもあきらめきれないほどに、人間にとってその欲求が強いものだからではないかと思います。

 そう考えると、私たちが最初に決めたやり方にこだわったり簡単にあきらめてしまうのは、自分自身が傷つかないようにするための無意識的な工夫といえるかもしれません。つまり「自分の思い通りにならないぐらいならあきらめた方がましだ」ということです。

でも、非現実的な欲求の実現にこだわるよりも現実的な目標を実現する方が、結果的にはずっと得るものが大きいのはいうまでもありません。「何をやってもうまくいかない」と思うときは、自分が「全か無か思考」にとらわれていないかどうか考えてみてはいかがでしょうか。
タグ:三日坊主
posted by MSCOスタッフ at 15:36| セルフメンタルケアのコツ

2016年01月11日

援助職のためのハーブ&アロマテラピー講座 第5回

Aroma & Herb
 
 昨年、クリスマスも近い12月23日に、「ハーブとアロマの講座」が行われました。もう、何回か参加している人もいて、最初から、「今日はハーブとアロマでリラックスするぞ〜」というような雰囲気がありました。年末はただでさえ、疲れがたまる時期なので、皆さん同じような心持だったのかもしれません。

 最初は、アロマの講座で、アーモンドオイルを使ったマッサージオイル作り。「今日、いいなーと思う香りを見つけて下さい」という説明があり、最初に9種類の香りを楽しみました。フランキンセンスの香り、ゼラニウムの香りは皆さんの間で好評でした。今回は、冷え、乾燥をやわらげる精油がそろっていました。お肌をしっとりさせるフランキンセンス、肌のバランスを整えるクラリセージ、むくみを解消させるサイプレスやジュニパーなど、皆それぞれ今の自分には何が必要かしら?と考えながらマッサージオイルを作りました。
 また、普段は気軽には購入できないジャスミン、ネロリなどの精油が入ったブレンドオイルを、リーフ型のチップにしみこませたおみやげも作りました。

 ハーブティーの講座では、クリスマスハーブティーを作って試飲しました。ドイツのグリューワインをイメージして、先生が考案したハーブティーです。グリューワインというのは、赤ワインに、オレンジ、りんご、シナモンスティック、クローブ、砂糖、カルダモン、オールスパイス、バニラエッセンスなどをいれたホットワインだそうです。
 ハーブティーでは、クリスマス色の「赤」を楽しむことができるハイビスカスを入れて、ローズヒップ、カモミールなどを加え、香りのスパイスとして、カルダモン、クローブ、シナモンを少しずついれました。最後にオレンジピール、ゆずなどの柑橘系を加えると、まさにグリューワインそのものの風味が楽しめました。これにはちみつなどを加えると、さらにおいしく飲みやすくなりました。
 おみやげに色々なブレンドのハーブティーをいただきました。アメリカやイギリスのブランドのハーブティーで、パッケージがとてもかわいらしいので、皆で「かわいい!」「いい香り!」などの声が上がりました。持ち帰ったハーブティーは、家でも楽しんで飲んでいます。

 心に余裕がないと、ハーブティーをいれたり、アロマオイルでのセルフケアがしづらい、と思いがちですが、だからこそハーブティーをのんだり、良い香りのオイルでマッサージしてみることで、心の余裕を作っていきたいな、と感じました。

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ハーブティー講師 村田 幸子 オリジナル
『グリューワイン風 クリスマスハーブティー』
約2杯分 300cc
3分以上蒸らすとコクが出ておすすめです
◆ハイビスカス、ローズヒップ
…ティースプーン各1杯
◆クローブ 3粒
◆カルダモン5個
◆シナモン3p程度
◆お好みでハチミツやジンジャーシロップなど
※ジャーマンカモミールを加えてもOKです。
posted by MSCOスタッフ at 22:40| オフィスの活動

2015年12月15日

6年生とトランプ

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 私がスクールカウンセラーとして勤務している小学校の相談室には、トランプが用意してあります。休み時間になると子どもたちがやってきて、特に相談のない子たちが遊んでいきます。トランプは、3人以上で遊べるし、休み時間内に何ゲームか遊ぶことができるので、人気のアイテムです。
 最近、6年生の女の子たち4人組は「大富豪」に夢中です。声をかけあって少しでも早く配り、少しでもだくさん遊ぼうと工夫しています。「先生もやろうよ」とスクールカウンセラーの私も入れてくれます。5人でやる「大富豪」、相談室はかなりにぎやかになります。

 彼女たちは、ここに「相談」というよりも純粋に楽しみにきているようです。リーダータイプでみんなをまとめているAさん、面白いことを言ってみんなを笑わせるのが好きなBさん、おしゃれが大好きで見た目もお姉さんっぽいCさん、マイペースでときどきとぼけたことを言う天然キャラのDさん。キャラはそれぞれですが、仲はとても良さそうです。Dさんは、初めて相談室に来たときは「大富豪」のルールを知らなかったのですが、みんながやりながら教えてくれたので、すぐに覚えることができました。お互いにフォローしたりカバーし合える仲間関係が築けているのがわかります。

 この4人(と私を入れた5人)がトランプで遊んでいるときに、もし他の先生がやってきたとしたら、とても驚くことでしょう。時にはケンカでもしているかのようなにぎやかさです。「なんでそこでそれ出すの!」「ムカつく〜」AさんとBさんは勝つのに必死。お互いに文句の言い合いです。また、私がちょっとでも本気で勝とうとすると「先生、大人げないんですけど!」とCさんからクレームが入ります。「いいじゃない。勝負に子どもも大人もないよ」と私もニヤリと笑って返します。
 勝った子は思い切り喜び、負けた子はガックリと肩を落とします(スクールカウンセラーもです)。でもどの子も「もう1回!」チャイムが鳴るまで遊び続けるのです。そして休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ると、「授業だ!」とあわててトランプを片付け始めます。あれほど文句を言い合っていた子たちも、ビリになってションボリしていた子たちも、協力し合って手早くトランプをまとめます。そして笑顔で「楽しかったー」「先生、また来るね!」と言って、あっという間に教室に戻っていきます。

 彼女たちが去り、急に静かになった相談室の中で、私は「ああ、彼女たちは遊びをまっとうしているな」という、何とも言えない安堵に似た気持ちを抱くのです。
 普段の4人は、お互いに気をつかい合いながら、仲良しの関係を保っているに違いありません。時には言いたいことを我慢したり、相手に合わせたくないのに合わせていたりすることもあるのでしょう。そのバランスを何とか保っているから、4人は仲良しでいられるのです。そのバランスが少しでも崩れると、仲間外れや、グループの分裂・対立が生じかねません。

 「自分が一番でありたい」「自分の思うとおりにしたい」という気持ちを全く持たずに生きていくことは不可能ですし、不自然です。そうした気持ちをこの4人は、トランプの中で上手に発散していると思います。「ムカつく!」このセリフを普段の関係の中で使ったら、途端に波風が立ちますが、トランプの中で相手が思うとおりのカードを出してくれなかった時に使う分には、許容されるでしょう。

 また、6年生にもなれば、大人への反発を抱いたり、反論したくなることもあるでしょう。そうした気持ちを真っ向から先生や親にぶつけたら、ただ怒られておしまいでしょうが、トランプの中でなら「先生、大人げない!」と思い切りぶつけることができます。そうです。彼女たちは、大人が大人げないことをした時には、そのことにきちんと気づく力があるし、本当は指摘したいのです。

 このように、「遊び」にはネガティブな感情や言いにくい気持ちを上手に表現、発散するための安全な仕掛けが用意されているのです。遊びの安全なところは「終わり」があることです。彼女たちの場合、チャイムとともに遊びは終わります。4人が「遊びをまっとうしている」と思うのは、「遊び」と「日常」にきちんと線引きをしているところです。トランプの勝敗で生じたネガティブな気持ちや葛藤を、教室には持ち帰らないのです。トランプを片付けるのと一緒に、相談室にきちんとおいていくのです。それができるのも「遊び」の力の1つです。

 卒業までの数か月。彼女たちがどのくらい相談室に来るのかわかりませんが、彼女たちの「遊び」がまっとうされるよう、この場と時間を見守っていってあげたいと思う日々です。
posted by MSCOスタッフ at 00:15| オフィス外での活動

2015年11月03日

ドリームワーク(DreamWwork)

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夢をいかす「ドリームワーク」の技法について
 「ドリームワーク」は、80年代からユング派の分析家R.ボスナックが研究、実践を重ねる心理療法の技法です。毎年数カ国でワークショップやセミナーを開催し、日本でも毎年ワークショップが開かれています。R.ボスナックの事例からは、夢として表れた心と身体の深層が再体験される様が生き生きと伝わってきます。

 先日、「ドリームワーク」を体験する機会を得て、実際に自分の夢をワークしてきました。夢の詳細は省きますが、夢にでてきた若い女性のしなやかな身体の動きや隠遁生活をおくるお爺さんの味わいある笑顔などを、自分の中から表れたイメージとしてひとつひとつ丁寧に意識を向け、再体験しました。それは、日常の意識が慣れた意識の状態=「自分」と思っている以外の「自分」を感じ、それを理屈でなく身体の感覚で認め、受け入れるような体験でした。

 ボスナックの著書にあげられている夢とそのワークを簡単に紹介します(『ドリームワーク』2004.金剛出版)。夢は、米国の911の後、直接の被害はなかったものの、多くの人々と同様に大きな衝撃を受けた米国女性のものです。


 〈夢〉 『同僚と廊下を歩いている。テロリストのような男がいる。その男は私にドンとぶつかって通り過ぎる。私は縮みあがり怯えている。その男を追いかけている別のテロリストが私にぶつかり、何か突き刺された感じがして衝撃を感じた。実は、その男が私の着慣れたシャツのポケットに、何か錠剤のようなものを突っ込んでいったのだ。』

 ワークは、次のように進みます。はじめの段階でセラピストは、夢見手が夢の環境に戻れるように手助けします。夢見手は、ゆっくりと身体の感覚も使って、詳細に夢の環境を思い出します。
─彼女が、歩いている廊下は広い?灯りはどんな感じ?はじめに男を見たときは、どこにいた?どのくらい離れていた?

 第2段階は、夢見手の心理的・身体的な体験、その出来事が起こっている間の彼女の身体はどんな感じなのか、に焦点をあてます。
─彼女は恐怖で縮みあがり、しびれて無感覚になったその状況を感じ続けます。

 第3段階としては、「衝撃」の瞬間の触覚に焦点をあてます。
─身の縮む感じ、激しい無力感、むかむかして少し吐き気も感じます。

 第4段階は、ワークのもっともデリケートな部分。自分と異なる人物を体験します。「テロリスト」のような自分と異なる存在、この馴染みのない主体に、夢の中での存在の感じをゆっくりと詳細になぞり同一化し、身体感覚を使って体験します。
─彼女は、テロリストの、つまり恐怖を撒き散らす者の体験の中に入ると、「南極のように冷たい」と言いました。それが、彼女が体験した911の衝撃と恐怖を体現している「テロリスト」の存在の核にあると考えられます。

 第5段階。彼女は、セラピストから「熱い筋肉で覆われた冷たい氷」と同時に、自我が感じた縮みあがる感覚を感じるように促されます。
─彼女は、夢の中で体現された恐怖と氷の力の両方を身体全体で感じます。しばらくして、彼女はそこから脱し、「不思議だわ。どうしようもない感じがなくなって、何とかやれる気がしてきた」と言いました。声に力があります。夢の後半の「シャツのポケットに入れられた錠剤」は、「戦いの中で用いる道具を手渡されたようだ」とも言いました。


 ドリームワークによって、無力感に圧倒された体験をそれまでと異なる感覚で再体験し、そこからそれまでは意識になかった異なる体感が生まれ、どうしようもない無力感の状態から、自分に力を感じることができるようになっています。希望が導き出されたと言えるように思います。

 人が夢の中に何を見出すかはさまざまです。単なるレム睡眠の状態での脳の活動とも言えるでしょうし、起きている間の記憶のなごりととらえる場合もあります。とはいえ、夢は現実の体験と同様に感情や身体感覚をともなうリアルなものでもあります。夢とどう向き合うのかによって、自分の中にある豊かなイメージ群とそこにある想像力を、現実の自分に生かしていくことができるのだと思います。
posted by MSCOスタッフ at 01:06| カウンセリング・キーワード

2015年10月03日

メンタルケアに取り入れたいアロマテラピー

アロマテラピー

 心の疲れは案外感じにくいものです。風邪のように、のどが痛い、鼻水が出る、という明らかな症状があるわけではありません。ただ、なんとなく気分が晴れない、何かすることが億劫、イライラしやすい、などの気分の変化や、食事をしてもおいしいと感じない、朝起きたとき、よく寝たなという感じがしない、などの、なんとなく不調・・・というときに、早めに気づいてケアすることが大事です。

 とにかくゆっくり休む、人に話をしてガス抜きをする、などのケアはいくつかありますが、その中で、アロマテラピーを使うこともお勧めです。カウンセリング場面では、考え方や、感情の整理などもお手伝いしますが、リラクゼーションの方法をお伝えすることも多いです。例えば、呼吸法、筋弛緩法の練習を一緒にしたり、音楽を使ったり、香りを使ってリラクゼーションを促す方法などです。

 もう少し説明すると、心が疲れているときは、活動するために必要な交感神経を働かせすぎていて、体を休ませる副交感神経が働く出番がないような状態が続いているときが多いので、いかに副交感神経を働かせるかが大切となります。その副交感神経を働かせやすくするのが精油の香りの力です。精油の種類によっては、交感神経が活性化されるものもあるので、副交感神経が活性化するような精油を選びましょう。

 副交感神経に作用する精油として主なものは、ラベンダー、マージョラム、カモミール、サンダルウッドなどです。これらの精油はリラックスを促します。また、グレープフルーツ、ベルガモット、オレンジなどの柑橘系の香りや、ローズ、ゼラニウムなどのフローラル系の香りは、リラックスの作用もありますが、気持ちがリフレッシュしたり、幸福感をもたらすような香りでもあるので、不安感をやわらげるのにも用いられます。人によって、香りの好みがあるので、自分が「いい香りだなぁ。リラックスできるなぁ」と感じる香りを選んでみてください。

 使い方としては、眠るときだったら、枕元に2〜3滴たらしてもよいですし、アロマポットやディフューザーを使って香りを広げることもできます。お風呂に1〜2滴たらして、芳香浴をするのもおすすめです。なんといっても、手軽に香りをとりいれることが大事なので、あまり難しく考えずに自分の好きな香りを選んでみて下さい。

 副交感神経を活性化するために、香りを用いることは役に立ちますが、それでも辛さや不調が続く場合は、医療機関やカウンセリング機関など、専門機関を利用して下さい。
posted by MSCOスタッフ at 01:06| セルフメンタルケアのコツ

2015年09月04日

自分用ストレスチェックリストとストレスコーピング

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 前回は、自分用ストレスチェックリストの作り方についてご説明をしました。今回は、引き続きAさんを例にとりそれをどう活用するかについてお伝えしたいと思います。

 【Aさん(35歳/男性/会社員)】のストレスチェックリスト。
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 このリストを日々ながめながら生活していると、Aさんは、同じストレス因があってもそれを強く感じる日と弱い日があることに気がつきました。よく考えてみると、曇天の日に苛立つことが多く、晴天の日には苛立つことが少なかったのです。そして、「胃痛」の起こる日の前はたいてい曇天の日が続いていること。つまり、梅雨の時期が最も「胃痛」のストレス反応が多いというパターンもわかりました。また、疲労感は、周囲の人やものごとが自身の思い通りにならないことへの苛立ちや不全感とつながっていることもわかってきました。
 なので「曇天が続く時」 「苛立ちや不全感」を感じる時には多めに休息を取るように気をつけてみることにしました。これがストレス対処法(ストレスコーピング)です。

 次にAさんは積極的にストレスを発散する方法も探して、ストレスコーピングリストも作ってみました。
 Aさんの趣味はエレベーターに乗ることです。特にM社のエレベーターは、動きがスムーズでドアの開閉が静かなのと、I社のエレベーターボタンを使用していることが多いためお気に入りです(I社のエレベーターボタンは文字が見やすく美しい)。そこで、Aさんは昼休みになると秩序の乱れた自身の職場を離れ、昼食を取りがてらM社のエレベーターが設置されている近くのオフィスビルに出かけて行きます。文字の美しいI社のエレベーターボタンを押し、M社のエレベーターのスムーズな動きに身をまかせていると苛立ちも少しずつ薄らいでいきます。また、自宅でI社のエレベーターボタンをながめながらK食品のポテトチップ(のりしお味)を食べている時間がAさんにとっては至福のときです。

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 ストレスコーピングは、できるだけ数が多い方が良いものです。たくさんあれば、ひとつ試してだめなら次、それがだめならまたその次を試すということもできます。もっと数を増やせないだろうか、と考えていたAさんは、ふと自分のリストは気分を発散するためのものしかないことに気づきました。
 ストレスコーピングにはAさんが実践しているような「気分発散型」のコーピングだけではなく、ストレス因を改善する方法を実践してみる「問題解決型」のコーピングもあります。そのふたつをバランスよく取り入れることがストレスマネジメントのポイントです。

 頑固で融通がきかず、自分の正しさにこだわるAさんですが、実はもともと内向的な性格で、自分の意見や気持ちを相手に伝えることが非常に苦手です。ですから、内心苛々することがあってもそれを相手に伝えることはめったにありません。「B氏はだらしがないが、柔軟性があるのでちょっと意見をしてみよう」と問題解決型コーピングの実践を思い立ったAさん。勇気を出して「もうすこし机上を整理した方が良いですよ。書類を探す手間が省けますから」と内心の苛立ちをできるだけ出さないようにしながらB氏に言ってみたところ、意外にもB氏は「それもそうだ」とAさんの意見を取り入れ、その日だけは普段よりも机上をきれいにしたのです。「そうか。言っても大丈夫なのか」と思ったAさんは、ストレスコーピングのリストの中に「机上を整理するように、さらりと相手に言ってみる」という項目を付け加えました。また、部長席下の謎の染み汚れについては、「見ない」というシンプルな問題解決型コーピングがうまくいくこともわかりました。

 さらに、Aさんは、B氏がAさんの意見を取り入れてくれたことに自身が大きな安心感を得たことについて「そうか。俺は内心B氏が怒ったらどうしようと思っていたのだな。相当気が小さいな」と思い、ストレス反応リストの中の「自分が間違っているのかもしれない」という不安は、自分が間違いを犯して怒られることへの不安感だったことにも気づくことができました。不安に気づくことでその不安感は軽減しました。

 いかがだったでしょうか。自分用ストレスチェックリストは意外と活用できそうだと思いませんか。

前回 自分用ストレスチェックリストを作ってみよう
posted by MSCOスタッフ at 18:00| セルフメンタルケアのコツ

2015年09月03日

自分用ストレスチェックリストを作ってみよう

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 今年(平成27年)の12月から「ストレスチェック制度」が導入されることになりました。社員50人以上の会社では、その実施が義務づけられることになります。メンタルヘルス不調を訴える労働者が増加している現況を鑑み、管理者が各職員のストレス状況を把握することによって精神疾患を未然に防止しようというのがその狙いだそうです。
 ストレスチェック制度の詳細については、厚生労働省が作成したポータルサイト(「こころの耳〜働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」)の中で見ることができ、サイト内にはストレスの度合いを自己診断するためのセルフチェックリストも付いています。私も試しにやってみたところ、仕事の質的なストレスの度合いが高いという診断結果でした。それは仕事柄、確かにそうだと思いました。
 しかし診断というのは、あくまで一般的な基準の中での自分の位置を確認するためのものですから、これだけでは個人のストレスの詳細まで理解、自覚することはできません。オフィスに来られる方々も「仕事がストレスで」とか「ストレス解消が難しい」ということはおっしゃるのですが、「仕事のどういうところにストレスを感じますか」とたずねてみると、案外わからなかったりするものです。

 自分がなんとなくストレスを感じていることはわかっても、どんな状況のどこにそれを感じているかということは意外と自覚しにくいものです。また、仕事の納期が迫っているときなど、実はかなり強いストレス状況下にあるにもかかわらず、「やるしかない!」と気持ちだけが前のめりになって心身の不調に気づかないこともよくあります。そのような状態を長く続けてしまうと、仕事の山場は乗り切ったはずなのに、何故か夜眠れない、食欲がない、気分が落ち込むなど、気がつけばうつ症状が出始めていた、ということにもなりかねません。そこで、「自分専用ストレスチェックリスト」を作ってみるというのはいかがでしょうか。

 皆さんは、自分がどんなことにストレスを感じやすく、またストレスが高まると心身にどのような変調が起きやすいか、ということがわかっていますか。
「段取り通りにものごとが進まない」「他者の言動・態度に過敏で少しでも相手の様子がいつもと違う」など人それぞれに強くストレスを感じる場面は違います。まずは、自分がストレスを感じやすい場面(ストレス因)のリストを作ります。次にストレスが高まったときの心身の変調(ストレス反応)を書き出します。
 頭痛や下痢などの体調不良などは自覚しやすいですし、身近な誰かのちょっとした言葉に傷つきやすくなるなど、心理的な変調も目印になります。そのリストを見ながら、自分自身の状態を確認することを習慣にすれば、どんな状況下でどのような不調に陥りやすいのかという自身のパターンにも気づきやすくなるでしょう。

 【Aさん(35歳/男性/会社員)】が、自分用ストレスチェックリストを作ることにしたと仮定してみましょう。
 秩序を重んじる几帳面な性格のAさん。職場内では、整理整頓の苦手な同僚の乱雑な机上をながめては、苛立つ毎日。また、コーヒーを入れるために給湯室に行くたびに、溜息をつきながらシンクの水滴を台ふきんで丁寧にふきとるのも日課です。台ふきんが汚れているときには、台ふきんを洗剤で洗うところからはじめることも。それ以外にも、通勤途上や買い物の最中など、ルールとマナーに厳しいAさんにとっては見過ごせない場面が山のようにあり、それらをやり過ごすことの出来ないAさんは、毎日へとへとです。
 Aさんは、自身のストレスチェックリストを作るにあたり、まず、ストレス因として「B氏の机上の書類の山」「給湯室のシンクの汚れ」などをあげました。そして、ストレス反応としては「苛立ち」や「怒り」「不安」など。これがストレス因だとわかっていることについてはすぐに特定できますが、「何かイライラするが原因がわからない」あるいは「何かありそうだが何かわからない」という場合には、もやっとした感じや嫌な感じなどをとりあえず書き出してみます。もしそのときに自分の中でつぶやいた言葉があればそれを書きとめておくのもよいかもしれません。
 
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 この自分用チェックリストを活用すれば、「こういった要因があるので今はストレスがある状態だ。」「ストレスが重なっているので休息や発散できる楽しみに耽る事が必要だ。」ということが客観的に意識できるようになります。
 そして、ストレスに具体的にどう対処するか(ストレスコーピング)については、次回あらためてお話をさせていただきたいと思います。

次回 自分用ストレスチェックリストとストレスコーピング
posted by MSCOスタッフ at 14:07| セルフメンタルケアのコツ