2018年01月04日

アクティブイマジネーション(Active imagination)

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  カウンセリングの技法は多くありますが、その中で、夢分析などのようにイメージを活用する技法もまた様々なタイプがあります。その多くは、無意識の世界から生じてくるイメージを受けとめて、そのイメージの内容を理解し体験しようとします。イメージを受けとめようと待つことになるので、受け身的な構えが多いといえるかもしれません。

 それらの構えに比べ、『アクティブイマジネーション』は『アクティブ』=能動的であることが大きな特徴です。無意識から生じてくるイメージを尊重することに変わりはないのですが、そのイメージとの関わり方が異なります。イメージは自然と浮かんでくるわけですが、何を『アクティブ』にするのかというと、はっきりと意識を働かせて、イメージとやりとりして『折衝』するのが大切と言われます。

   具体的には、まずイメージの出発点を決めます。例えば夢にでてきた‘何か’からでも良いですし、心惹かれる写真や絵画なども良いようです。そして、イメージの中でやりとりする相手(人に限らず、動物やモノや風景全体でも)を決めて、相手の様々な特徴を細かく観察します。次第に、イメージは自律性を発揮して動きはじめます。
@イメージと出会ったら、出会いの意味を考える。
Aその上で、こちらに何ができるか、何をしたいのかを考える。
Bなんとなくでなく、「こういう理由でこれを選ぶ」と意識しながら選ぶこと。
Cそれをイメージの中で行動に移す。
Dイメージは、それに応えて何がしかの反応を返してくる。
記録をとりながら、この@からDを繰り返していきます。イメージが無意識からのモノでなく、勝手な想像のように思えても大丈夫です。意識が作っているようでも無意識からの要素が入らないイメージなどないのです。

    以下に、樹木と牛と牛飼いが描かれた絵画から『アクティブイマジネーション』を試みた例を紹介します。
 「私は畑での農作業をしている。そこへ牛に乗った旅人が通りかかる。旅人がこちらへ笑顔を向けて『ご精がでますね』と話しかけてくる。私は農作業の手を止めて『こんにちは』と応じる。旅人はその日泊まる宿へ向かう道を尋ね、私はそれに答える。私は、生き生きした牛にl惹かれて撫でると、あたたかい生命感が伝わり心地よくなる。すると、旅人が牛をくれると言う。『是非世話してやってほしい』と言われ、それなら、と応じる。旅人は宿に向かう。私は牛とともに見送りながら、うれしい反面、ちゃんと世話をしていけるか少し不安も感じている。」

   この『アクティブイマジネーション』の意味を解釈するには、牛の象徴性や、旅人が宿を尋ねてくる物語の意味するモノなどを深めることも大切になるでしょうが、まず最初に「私」が無意識とどのように関わっていこうとしていいるかを理解することが大切なポイントです。
   「私」は、旅人とアクティブに好意的に関わり、少し不安に感じながらも旅人からもたらされた新たな生命とともに生きていくことを決めています。これは、「私」という自我がこれまで知らなかった自分の中のエネルギーやメッセージを受け入れて、個性化の道(自分らしくあるための心の成熟)に向かおうとしていると言えるようです。

    この例のようにイメージにアクティブに関わり、折衝することで、その世界が広く豊かに展開していきます。そこから、自我にとって有益な気付きや変化が生まれることになっていくと言われています。
(参考文献:「無意識と出会う」老松克博.2004.トランスビュー)
タグ:イメージ
posted by MSCOスタッフ at 11:05| カウンセリング・キーワード

2017年11月27日

ストレス対処におすすめ! 「好きなことリスト」

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 先日、勤め先のクリニックで、「ストレス対処法」のミニ講座を行いました。10名以下の少人数のグループでした。自分のストレスをどうにか対処したい!と思っている皆様にお集まりいただきました。ワークをいくつか行ったのですが、その中の1つについて、参加した方に好評だったワークがあったので、ご紹介いたします。

 ストレスがたまったときに、すぐ解決できない場合、気分転換を取り入れるための方法です。「自分の好きなこと、ちょっと気持ちがあがること、ほっとすることを、具体的に20個紙に書きだす」というワークです。これはもともと私が別の研修会で教えてもらったワークでした。

 気分転換といっても「旅行に行く」とか「映画を見る」とか比較的エネルギーを要することから、「仕事帰りにケーキを買って帰って紅茶をいれて食べる」、「家についたら、声を出して「あー疲れた!今日もよく頑張った」と自分に言ってあげる」などの比較的小さいエネルギーでできることまで様々あります。ポイントは、かなり具体的に書くというのと、小さい気分転換法であればあるほど すぐできるのでよいということです。最初は、参加者の皆様の様子があまりにも辛そうだったので、20個は到底うまらないだろうな・・・と思っていましたが、意外にも20個近く書いていた人たちがほとんどでした。

 書いたあと、お隣同士で、シェアしてもらいました。参加者の皆様は、それぞれ家庭、仕事などのストレスを沢山かかえて、最初は神妙な面持ちだったのですが、自分の好きなことを、相手に話し始めたとたんに、ぱっと笑顔になり、声も大きくなり、笑い声も聞こえ、部屋の空気も一気にやわらぎました。

 人は、自分の好きなこと、楽しいことをやっていると充足感を感じます。逆に嫌なこと、理不尽なことに出会うと、一気に視野が狭くなり、一生そこから抜け出せないような閉塞感をおぼえます。そして、自分に楽しみがあったことさえも忘れてしまいます。

 参加者の皆さんには、今回作った「好きなことリスト」を見えるところに貼っておきましょうと伝えました。そして、気持ちがふさぎ込んだり、追い詰められてしまったりしたときには、気分転換することを忘れてしまうので、そういうときこそ「好きなことリスト」を見て、1つでもできそうなところから実践してほしいと伝えました。

 後日、参加者の方から、「あのリスト、貼っています。それを見て、あっそうだ散歩だ!と外にでました。あれを使ってうつっぽい状態から持ち直しました。気づくと落ち込んでいたりするので、気分転換!と気をつけてやってみています」というお話を聞くことができました。

 ストレスは、すぐに解決できることは少ないですし、抱えたまま持ちこたえなければならないことも多いのが現実です。「好きなことリスト」は、嫌なこと、憂鬱なことに注意を集中させすぎず、ほどよく注意を分散し、かつ好きなことに触れる時間を増やすことがねらいなので、気分転換がしづらい方にはおすすめの方法です。
posted by MSCOスタッフ at 23:28| セルフメンタルケアのコツ

2017年10月31日

日々の生活に「気づいて過ごす」(マインドフルネスストレス低減法体験記)

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 「マインドフルネスストレス低減法」(Mindfulness-based stress reduction: MBSR)の8週間プログラムに参加しました。
 MBSRは米国の生物学者で心理学者のジョン・カバットジンが1970年代に慢性疼痛の緩和のために開発した技法で、最近流行のマインドフルネス技法の元祖と言えるものです。マインドフルネスでは仏教の「念」を中心ととらえ、自分の自動的な行為や思考に気づきながら、今ここの状態に「ある」ことを大切にしています。うつ病の再発予防や不安・身体症状の軽減、日常生活の改善を意図しています。

 今回のプログラムは米国で資格を取ったファシリテーター2名の指導の下、8週間にわたりマインドフルネスの実践を毎日続けるというものです。30名ほどの参加者には臨床心理士や学校教員、医師、看護師など対人支援職だけでなく、疾患から回復途上にある当事者や家族、あるいは一般の会社員や主婦、学生などさまざまでした。
 全員が週1回3時間ほどのグループセッションを受けながら、45分程度の瞑想やヨガなどのマインドフルネス課題を日々の生活で継続するというものです。将来的にMBSRの指導者になるには、基礎要件のひとつとして同プログラムへの参加が義務とされています。


 8週間の前半では主として呼吸と身体の感覚に意識を向けるボディ・スキャン瞑想と、短い(10分〜20分程度)の瞑想の実践が課されます。私自身、瞑想やヨガの実践経験は多少ありましたが、連日の瞑想はなかなか容易ではありません。それでも連日(半ば大変でも)やっていると、徐々に自分の感覚への意識や気づきが増していくのがわかります。体調も大変よくなり、気分や感情の変化、果ては睡眠まで改善していきました。

 プログラムの後半になるとハタヨガの実践に加え、例えば手洗い、洗濯、入浴、歯磨き、あるいはいろいろな瞬間で、さまざまな側面に気づきながら、意識して毎日の日常生活を送るように心がけていきます。プログラム終了後もあらゆる面でマインドフルな生活を実践できるようにするためです。

 こうした瞑想実践では、どんなことが起こったかということは重要ではなく、むしろありのままを受け止め、それで大丈夫であることに気づくことに重きが置かれます。よく瞑想をしていると、時にあれこれと考えが生じたり、「明日の仕事はなんだっけ?」などと関係ない考えが出てきたり、などするものです。マインドフルネスではこうしたものが出てきたら、「おお、出てきたな」と思考に気づくことはしますが、出て来た思考の「相手」はしないで、そのまま実践を続けます。これこそがマインドフルなあり方であり、身につけるためには日々の実践を続けることが大切になります。
 でもMBSRは禅などの修行と違い、自分を追い込むものではありません。こうした実践ができない場合にはできないことを責めずに、むしろ「できない」という気持ちに自ら優しく接するように向き合うことが大切になります(これを「自らへの慈しみ(セルフ・コンパッション)」と呼びます)。

 やっていて面白いことに気づきました。それは仕事をしているときだけでなく、休日や旅行など一見すると楽しく過ごせていると思えるときこそ、瞑想やヨガなどの実践が大切だということです。自分で感じたり、考えたり、わかっていたりする(つもりの)ことって、実はすべてではないのですね。メンバーとともに迎えた8週間のフィナーレは本当に感動的でした。カバットジンは「マインドフルネスとは(他との)関係性である」と述べたそうですが、それを実感できる体験でした。


 もちろんマインドフルネスには限界もあります。例えば、現在うつ病の治療中という人は主治医にプログラム参加について事前に相談された方がいいでしょう。
 どのくらいの効果があるかは現在世界中で実証研究が続けられています。もし可能ならば新たな治療と生活の選択肢としてマインドフルネス実践を取り入れることも検討できるかもしれません。MBSRはいくつかの民間団体の主催で首都圏近郊でも開催されています。よろしければチェックしてみて下さい。
posted by MSCOスタッフ at 16:28| マインドフルネス

2017年10月08日

「発達の2つの目標」と「適応するための力を支える感覚統合」

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 子どもたちとドラマと造形のワークショップを行っている「所沢クリドラタウン」で、保護者の皆さんと「子どもたちの育ち」についてお話しするのも今年で4回目になりました。前回の「感覚統合」についてのお話も踏まえての内容です。

@発達の2つの目標「自己形成」と「社会化」
 発達には2つの目標があるといわれています。1つは「自己形成」。自分を形作るということです。2つ目は「社会化」。形作った自分を、社会の中で適応させるということです。

 自分を強く出しすぎると「ワガママ」「ジコチュウ」などと言われ、周囲に受け入れられなくなってしまいます。しかし、周りに合わせすぎて何もかも相手に従っていては、自分がなくなってしまいます。自分の本当の気持ちや欲求がわからなくなり、自信が持てず、周りとうまくかかわれなくなってしまうのです。ですから、自己形成と社会化の発達はセットで、バランスよく育っていく必要があります。

 自己形成と社会化が獲得されていくのは、子ども集団の中です。特に「遊び」は大きな役割を果たしています。遊びにはまず「身体機能」を高める働きがあります。遊具遊びやアスレチックのように、つかむ、ぶら下がる、またぐ、くぐるといった動き。おにごっこやかくれんぼ、ドロケイのように、走る、跳ぶ、くぐる、よけるといった動き。多様な動きをともなった活動により、神経や筋肉の機能が発達し、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールするなどの調整能力が育まれます。思いきりのびのびと体を動かすことを通して得られる成功体験や有能感は、自己形成に大きな影響を与えます。

 また、遊びにはルールのあるものが多く、社会性を身に着ける機会を与えてくれます。ルールを守ることでセルフコントロールの仕方を学びます。ルールを友だちと共有するためのコミュニケーションスキルも伸びていくのです。

A適応の力を支える「感覚の統合」
 こうした発達の適応に必要な力の育ちには、「感覚の統合」が重要なポイントになっています。
 学習能力や運動能力など、目に見えるスキルについ着目してしまうのですが、実は、そうした能力の発達は「筋力の発達」や「眼球運動のコントロール」がもとになっています。さらには、「視覚認知」「平衡感覚」「固有覚」「触覚」「聴覚」といった感覚の統合が支えています。

 感覚は目に見えないので、統合の度合いはわかりにくいのです。詳細で正確な判断は、もちろんしかるべき専門機関で専門家の意見を仰がなければなりません。しかし、だからといって日常の中で私たちが何もできないということでもありません。
 発達の2つの目標のところでも述べた「遊び」には、感覚を刺激する要素がたくさんつまっています。触覚を刺激する遊びには、フィンガーペインティングや粘土遊びなどがあります。トランポリンは平衡感覚を使います。
 また、生活の中のちょっとした「お手伝い」は、感覚統合にとってもとても大切な営みです。雑巾がけ、お皿運び、洗濯物たたみなど、手と目の協応を養います。


 今の時代、当たり前に育っていたはずのものが、育ちにくくなってきています。スキルや知識重視になり、学習やトレーニングに躍起になってしまいやすいのですが、遊びやお手伝いなどにも目を向けてみるがよいともいます。仲間とかかわったり、体を使うことなどの「日常の当たり前の営み」が、子どもたちの育ちを支えているのです
タグ:遊び
posted by MSCOスタッフ at 14:48| オフィス外での活動

2017年08月30日

整骨とカウンセリング

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 先日、左の股関節が痛くなり、お尻や膝まで痺れてきたので整骨院に行きました。初回、まず、どこがどんな感じに何をすると痛いか、ということを伝えると、何かきっかけがあったのかときかれました。特に思い当たらないけど、前からよく違和感はあったと言うと、いろんな動きをさせられて、これは痛いか、どこから痛むかなどときかれました。
 それに答えていくと、最終的に先生から、骨盤がゆがんでいるので右足と左足の長さが違う。長い右足に左足を合わせるから左足の外側の筋肉が緊張し、そうすると逆に内側の股関節は縮こまるという状態が続いている。そのせいで左の股関節が痛くなっているのだろう、という見立てを伝えられました。
 お尻やひざがしびれているのは、股関節が痛いのをかばうと、周りの筋肉を代わりに使うようになり、そこを無理に使いすぎて硬くなっているからだろうと言われました。さらにその太ももから膝にかけての筋肉がつながっているお腹の内側にある腸腰筋も緊張していると言われました。
 治療ではまず凝っている筋肉をほぐされ、緊張しているところを緩められ、自宅でできるストレッチを教わり、また1週間後に来てください、と言われて終わりました。

 終わってから、これはカウンセリングに似ているなと思いました。違いは身体のことを扱うのか、心のことを扱うのかです。
 どちらも困った状態に対して、いつからそれは起きていて、何かきっかけがあるかきかれます。そして、なぜそうなっているのか、何が起きているのか見立てながらそれに応じた質問をしていきます。
 どちらも患者(来談者)が訴える現象は一つでもいろいろな部分がつながって影響しているからです。それから、起きていることの理解を伝え、固まって本来の動きをしていないところを緩めていくと、本来の自分の動きを取り戻していきます。
 どちらも行くと少し元気になります。でも一度では変わりません。そして一番大事なのは、どちらも他の人が代わってやってあげられないということです。自分の身体、自分の心には自分自身で目を向けて、気づいて、取り組んでいかないとよくならない、変わらない、ということです。
 私は、毎週整骨院に通い、ストレッチを続け、日常生活でも荷物を持つ手を変え、気づいたら左股関節の違和感はなくなっていました。そんな風にカウンセリングも自分の心に向きあって取り組んで行くことで、変化していくのです
posted by MSCOスタッフ at 23:01| 心理エッセイ

2017年08月11日

架空ケース:「依頼されたことができるかどうか不安だ」

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<架空のケースを元に、実際に起こりがちな悩みとカウンセリングのアプローチを紹介しています>
 上司に頼まれたことができるかどうか不安になってしまった、Dさん(20代後半 会社員 男性)。

 Dさんは、与えられた仕事はコツコツと取り組み、確実に結果を出してきました。その仕事ぶりで上司や同僚からの信頼は厚く、入社5年目の春に上司の推薦で主任に昇格しました。
 そんな中、上司から「これまでに担当した仕事の成果をまとめて、来月の会議で発表して欲しい」と頼まれました。この会議は来年度の予算決めの参考とされる重要な会議です。Dさんは早速資料作りを始めたのですが、次第に不安が大きくなり、憂うつな気分になってきてしまいました

悲観的な予測
 今、Dさんを不安にしていることを言葉にするように促すと、資料作りを進めていくうちに考えるようになったことを振り返りました。
 「これまで担当した仕事を振り返ってみましたが、こんなことを成果と言っていいのだろうか?求められている水準に達していないのではないか?という思いが頭をよぎるようになりました。とはいえ、成果が少ないと評価が下がり、予算が削られてしまうかもしれません。こう考えていたら、なかなか資料作りが進まなくなってしまい、このペースで間に合うだろうか?とさらに不安になってきて、やる気がなくなってしまいました」

 このように不安を喚起する思考の背景には、多くの場合“悲観的予測”が横たわっています。Dさんの場合は、「間に合わないかもしれない」「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」などです。悲観的な予測は不安の要因にもなりますし、エネルギーを現在から引き離し、未来へと向かわせます。Dさんは未来の不安が強くなり、今取り組むべき作業にエネルギーが向けられなくなっていました

不安解消のエクササイズ
 この“悲観的予測”に対して、まず、未来は100%予測できないという視点を導入します。未来は100%予測できないという視点を持つと、不安を喚起する思考を正当化しようとする態度から、自分を探求していこうとする方向へシフトしていきます
 探求へとシフトしたら、次に、Dさんの思考が自分を苦しめる結果になっていることや、不安にさせるのはDさんの思考であり、今のありのままの体験ではないことへの気づきを促します。そして、それはDさんにとってどういうことだと感じるか、時間をかけて考えてもらいます。

 Dさんは、「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」という考えの背景に目を向け、高く評価されたいという気持ちがあることに気づきました。そして、主任に昇格した気負いもあり、いつの間にか5年の実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたかもしれない、と考えました。
 また、予算のことは、会社の業績や事業展開によって変わるので、自分が責任を負うことではないと思い、余計な力が入っていたことに気づきました。

 さらにDさんは、悲観的な予測をすることは自分自身にとってどんな意味があるのだろうか?と考えました。すると、先ほど、実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたのかもしれない、と考えた時、一方でその考えを認めたくないという気持ちもあることに気づきました。そして、悲観的な予測というものは、もしかしたら、自分が見たくない感情や現実を覆い隠し、直面しないようにしているのかもしれない、という考えに至りました。

 Dさんは、今取り組むべき作業にエネルギーが費やせなくなっていたことを強く自覚し、資料作りに意欲を持てるようになっていきました。

※システム・センタード・アプローチの「不安解消のエクササイズ」を適用したケースです。
posted by MSCOスタッフ at 00:00| 架空ケース

2017年08月10日

不安解消のエクササイズ

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 先日、システム・センタード・アプローチ研究会が主催するセミナーに参加しました。このセミナーは、イボンヌ・アガザリアンという、アメリカの心理療法士が創始したSCT(Systems-Centered Training/Therapy/Approach “http://www.systemscentered.com/”)の理論を学びながら、グループや個人のシステムについて理解し、自己理解と他者理解を深めることを目的としたグループ体験をするというものでした。

 SCTでは、気持ちがどのようにして生じたか、ということを重要視します。私たちは気持ちを言葉で語りますが、気持ちを表す言葉には「楽しい」「怒っている」など、感情をシンプルに表現するものと、「捨てられた」「無視された」など、その人の体験から生じた気持ちとそれにまつわるある種の考えや解釈の両方が合わさった複雑なものとがあります。
 実際の体験そのものから生み出される気持ちと、「捨てられた」とか「無視された」といった体験の解釈によって生み出される気持ちは異なっています。また、「捨てられた」とか「無視された」といった枠づけが生じると、その人は自動的に犠牲者の役割を取ることになります。  
 SCTでは、これらの枠づけ(防衛)をほどいて、ありのままの感覚的な体験からくる気持ちと、思考に誘発されて出てくる気持ちとの違いをわかるように探求し、まだ見ぬ新しいものを発見することを目指しています。

 このセミナーではいくつかのグループエクササイズを体験しました。なかでも「不安解消のエクササイズ」は不安な気持ちになった時に役に立つのではないかと思いました。
 このエクササイズでは、不安がどこから来ているのかを探し出し、思考に誘発されて出てくる気持ちと、私たちが本来注意を払うべき本物の体験との違いを見出そうとします。
 私たちが現実を確認しないまま、悲観的な予測を説明的に語る時、不安は高まってしまいます。また、楽観的な予測は、私たちが現実検討することから遠ざけてしまいます。SCTでは、不安は現実を間違って解釈しているシグナルだと考え、悲観的・楽観的予測は、私たちの探求心や一般常識を奪ってしまうと考えます。
 まず、「今、あなたを不安にしていることを言葉にしてみましょう」という問いかけがあり、自らの現実をチェックするように要求されます。
不安は、だいたい、次の3つの出所の中のどれか一つから湧いてきます。
 ・不安を喚起するような考え(悲観的な予測や、他者が考えていることに対する恐れ、など)
 ・あまりなじみのない身体感覚
 ・不確かさそのもの
 例えば、「友達に知れたら、嫌われるかもしれない」というのは、不安を喚起する思考です。不安にするのはその思考であって、現在の体験に対する防衛であり、今のありのままの体験ではないのです。
 エクササイズでは、「あなたは未来を100%予測できるのですか?」という介入をし、自分自身の思考が自分自身を苦しめる結果になっていることへの気づきを促し、さらに、どう感じるかを探求します。悲観的な予測がもたらす代償や、遠ざかっていた今のありのままの体験に目を向けていきます。

 好奇心を持ってまだ知らない新しいものに出会うことが、私たち人間のシステムが発達するための第一歩だ、とSCTは主張しています。私は、このセミナーに参加し、いつもの慣れ親しんだ考えやパターン、思い込みのために不安やあきらめの気持ちに支配され、前に進むチャンスを逃してしまうことがあると再認識しました。好奇心を持ち、未知のものとの出会いを楽しむことができたら、人生が豊かなものになるのではないかと思います。

 セミナーで学んだことをもとに、「依頼されたことができるかどうか不安だ」と感じている20代後半の会社員の架空ケースを別記事でご紹介します。

(参考文献:イヴォンヌ・M・アガザリアン著 鴨澤あかね訳 『システム・センタード・アプローチ −機能的サブグループで「今、ここで」を探求するSCTを学ぶ−』 創元社)
posted by MSCOスタッフ at 17:55| 心理エッセイ

2017年06月28日

自分が予期せぬ病気になってしまったとき・・

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 先日、病気の治療をしながら働く人の職場での支援についてお話を聴く機会がありました。この時の病気は癌疾患でしたが、治療中の8割の人が仕事の継続を望んでいるそうです。また、職場に相談しない人の半数以上が「周囲に心配をかけたくないから」という理由だそうです。(東京福祉保健局 がん患者の就労等に関する実態調査(H26))
 そして、癌治療中のメンタル面のサポートはされやすいが、それ以外に診断前の検査段階、治療方針検討期間、治療後の経過観察期のサポートも必要であるが、実際に相談できる場は少ないとのお話もありました。

 それまで健康で過ごしてきたところに、心身の疾患や障害が生じた時、その重大さによって出現の大きさの違いはあるとはいえ、ショックや混乱、病気の否認やそこから逃避、抑うつ、怒り、悲しみなど様々な感情や現象が生じます。
 そして治療中、また疾患によっては治療後も再発の不安や今後の生活への不安が続きます。それでも多くの場合は、普段の生活(仕事、育児、介護、家事など)と両立が求められ、疾患の治療や普段の生活の維持に重点がかかり、ご自身のメンタル面へのケアの優先順位が下がりやすくなります

 適切なメンタル面のサポートを受けることで、ある程度納得できる治療に向えることができたり、生活を送る上で負担のかかり過ぎない手段が見つけられたり、自分のおかれている状態を少しずつ受け入れられることに繋がります。
 一人で抱え込みすぎずに相談機関などをうまく使いメンタルケアを行なうことが重要です。その際にサポートし合える職場の風土作りの重要性も改めて考えさせられました。
タグ:病気
posted by MSCOスタッフ at 14:57| 心理エッセイ

2017年05月14日

更年期とストレスマネジメント

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 5年ほど前から更年期症状に悩まされています。もっともつらいのはめまいと不眠、疲れやすさなのですが、その症状が強く出る日とまったく出ない日があるので、これは何かしらのストレスと関係しているのだろうと思い、セルフモニタリングを通してストレス因を探るのがこの数年間の習慣になっています。

 ストレスの原因は、一般的にはメンタル因を推測しがちですが、日々セルフモニタリングを続けていて感じるのはストレス因には意外と環境因も大きいということです。たとえば、冷房の効いた場所で長時間過ごすと体温の調節がうまくいかなくなり発熱するとか、長時間騒がしい環境に身を置いた後は肩から背中あたりの強張りや緊張が強くなり不安感が誘発されるとか。

 更年期症状というのは、どれも自律神経の乱れから起きる症状ですので、どういうことでその乱れが生じるのかという原因やパターンを知っておくことがとても大切だと感じています。前述のような環境因だけでなく、たとえばやることがたくさんあり過ぎてこなせるだろうかと不安になり、それがめまいの症状につながるなどというメンタル面からくる症状もありますので、いろいろな側面から症状とのつながりを見ていく必要があります。

 いずれにしても最も重要なことは、自分自身をよく観察して何が起きているのかを知ることです。自分の中で何が起きているのか、それを誘発したのは何なのかを知ることで、ある程度症状の出現を予防するための工夫はできるものだなというのが、このつらい更年期症状との付き合い方を日々試行錯誤する中での実感です。ごく単純なことですが、前述の症状を予防するためには、からだを冷やさないためにストールを持ち歩くとか、騒音対策のために耳栓を使うとか、そういう簡単な工夫が意外と効果的な場合もあるということです。

 ただ、ストレス因と症状のつながりがわかっても避けられないストレスもありますから、その場合はストレスコーピング(ストレス対処法)を使います。身体面でいえば、たとえば「からだをほぐすためにストレッチやヨガをする」とか、「リラックスできる音楽を聴きながら楽な姿勢でゆっくり座ってみる」とか、心理面では、つらいなと感じるときには、前もって企画しておいた「楽しみになるような予定の詳細をイメージしてみる」とか。

 つまり更年期をうまく乗り切るには、ストレス因を知って予防すること。そのストレスが避けられない場合には、ストレスが高まり過ぎたり持続しすぎないようにコントロールすること。そういったストレスマネジメントのスキルが欠かせません。自分の特性をよく探り、対処しましょう。
posted by MSCOスタッフ at 12:41| セルフメンタルケアのコツ

2017年03月29日

自立の季節

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 最近耳にするラジオCMで、転勤族になった息子が家を出ることになったことを話す場面での父親との、面白いやり取りがありました。「俺は転勤族になるんだよ!」「そんな奴は出てイケー!」息子は「出て行ってやるよ!盆と正月とGW以外、帰ってこねーからなー!」聞いてるこちらが「ちゃんと帰ってくるんだ」と突っ込みたくなるオチ。家族の絆は結ばれています。お互い突き放すようなケンカ腰の物言いがそっくりな父親と息子。

 また、某マンガの1シーンですが、こんな自立もあります。駅のホームで心配そうな両親や家族に見送られる少女。心の中では、故郷の景色全部を軽々と肩にのせる巨人のような自分をイメージして電車に乗り込みます。心細さから逆に自分を大きくとらえ、同時に自分を育んでくれた環境と人とをどれだけ大事に思っているかが、読者に伝わります。

 「自立」を検索すると“自分以外のものの助けなしで、または支配を受けずに自分の力で物事をやっていくこと”とあります。子ども時代に育ててくれた人から離れて独り立ちしていくことです。

 人は感受性も柔らかく可塑性も高い子ども時代に親や近しい人からの影響をスポンジのように吸収し、粘土のように型どり、たたき台にしていきます。成長するにつれて、それらを咀嚼したり消化したりしながら、自分の身になじんだものとしていきます。そうして、親の影響を取り入れたり手放したりしながら自由に自分独自のものを作っていく過程があって、自立は進んでいきます。

 ただ、時に気付かないうちに親から取り入れた価値観や志向を咀嚼し消化しないまま、自分本来の感受性や志向とミックスさせずに無理に丸飲みしてしまっている場合があります。そうすると、自己否定の気持ちが芽生えてきます。自分で自分を認めることが難しくなってしまうのです。消化して自分のものにしたのか、親の複製になってしまったのかわからなくなってしまう場合もあります。これではいくら形だけ親から離れても自立ではありません。

 もし、自分を認められない感覚が身についてしまっているなら、いったん立ち止まって自分に向き合うことが大事です。親から取り入れたものを咀嚼し消化しないまま子ども時代のように丸飲みのままになっていないか、吟味することが必要です。そうすることで、親のものや子ども時代のものが自分の中に居座っていることに気付くことになるでしょう。

 それらが自己否定感を生み出すものとなっているなら、それを手放して今の自分自身を感じること、そして親をひとりの人として認めること。それが、自立の道を進むことを後押ししてくれることになるのではないかと思います。

 冒頭のラジオCMの父親とそっくりなケンカ腰の息子は、実家を出ることで父親と離れ自分の父親譲りのところに気付くことで、さらに自立が進むかもしれません。また、マンガの少女は肩にのせた故郷の景色を慈しみながらもこれから進む景色に目を向けていくことで、等身大の自分を認めていくことになるのかもしれません。

タグ:自立
posted by MSCOスタッフ at 22:29| 心理エッセイ