2018年02月27日

マインドフルネスの効用と実践

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 マインドフルネスは「意図的に今この瞬間に価値判断をすることなく注意を向けること」(Kabat-Zinn, 1994)で、ヨガや瞑想などを用いて行います。マインドフルネスストレス低減法やマインドフルネス認知療法など、マインドフルネス瞑想を用いた技法・心理療法の報告が数多く行われています。GoogleやFacebookなど大手IT企業で社員の生産性向上や健康増進に利用されていることはご存知の方も少なくないでしょう。

 効果としてはうつ病の再発予防や、心配や不安の低減、慢性疼痛や身体症状の緩和、幸福感の増加など、心身の健康を高めるなどが示されています。ここ数年、新聞・雑誌・テレビなどでもさまざまに取り上げられ、マインドフルネスを取り上げた書籍やCD、DVDをはじめ、スマホ用のアプリなども配信されています。

 簡単なマインドフルネス実践の方法を一つ紹介しましょう。
早稲田大学の熊野宏昭先生(心身医学)の提唱するやり方です。
  1. 楽な姿勢を取ります。座っていても、横になっていてもかまいません。
  2. 呼吸をコントロールせずに、普通にしてみます。お腹や胸がふくらんだり縮んだりする感覚に注意を向け、その感覚の変化を気づきが追いかけていくようにします。
  3. 呼吸に注意を向けるのが難しいときは、息を吸うときに「ふくらみ、ふくらみ・・・」と、吐くときに「縮み、縮み・・・」と、心の中でとなえます。大きな呼吸なら「ふくらみ、ふくらみ、ふくらみ、縮み、縮み、縮み・・・」、小さな呼吸なら「ふくらみ、縮み、ふくらみ、縮み・・・」のような感じです。
初めのうちはなんだかよくわからなかったり、慣れずに妙な感じが起きたりするかもしれませんが、そのままでかまいません。一日1分でも続けてみましょう。やる前とやった後でなにか違うでしょうか?言葉にしてみて下さい。

 実践を毎日やっていると、感じる感覚が日によって異なるかもしれません。マインドフルネスの要は「気づき」です。「気づき」を大切にしていくことが実践のコツかもしれません。もちろん、なにも感じなくてもいいのです。それは「なにも無い」ことに気づいたことですから・・・

 マインドフルネス実践の方法はいくつもあります。興味を持たれたら、是非ご自分で試してみてはいかがでしょうか?
熊野先生のインストラクション音声付きのサイトはこちら:
https://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html
呼吸のマインドフルネスのやり方が詳しく書かれています。

南新宿カウンセリングオフィスでは「マインドフルネスのグループワーク」を定期的に行っています。小グループで基本的なマインドフルネスを体験してみるプログラムです。
興味をもたれた方はご連絡ください。
posted by MSCOスタッフ at 00:57| マインドフルネス

2017年10月31日

日々の生活に「気づいて過ごす」(マインドフルネスストレス低減法体験記)

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 「マインドフルネスストレス低減法」(Mindfulness-based stress reduction: MBSR)の8週間プログラムに参加しました。
 MBSRは米国の生物学者で心理学者のジョン・カバットジンが1970年代に慢性疼痛の緩和のために開発した技法で、最近流行のマインドフルネス技法の元祖と言えるものです。マインドフルネスでは仏教の「念」を中心ととらえ、自分の自動的な行為や思考に気づきながら、今ここの状態に「ある」ことを大切にしています。うつ病の再発予防や不安・身体症状の軽減、日常生活の改善を意図しています。

 今回のプログラムは米国で資格を取ったファシリテーター2名の指導の下、8週間にわたりマインドフルネスの実践を毎日続けるというものです。30名ほどの参加者には臨床心理士や学校教員、医師、看護師など対人支援職だけでなく、疾患から回復途上にある当事者や家族、あるいは一般の会社員や主婦、学生などさまざまでした。
 全員が週1回3時間ほどのグループセッションを受けながら、45分程度の瞑想やヨガなどのマインドフルネス課題を日々の生活で継続するというものです。将来的にMBSRの指導者になるには、基礎要件のひとつとして同プログラムへの参加が義務とされています。


 8週間の前半では主として呼吸と身体の感覚に意識を向けるボディ・スキャン瞑想と、短い(10分〜20分程度)の瞑想の実践が課されます。私自身、瞑想やヨガの実践経験は多少ありましたが、連日の瞑想はなかなか容易ではありません。それでも連日(半ば大変でも)やっていると、徐々に自分の感覚への意識や気づきが増していくのがわかります。体調も大変よくなり、気分や感情の変化、果ては睡眠まで改善していきました。

 プログラムの後半になるとハタヨガの実践に加え、例えば手洗い、洗濯、入浴、歯磨き、あるいはいろいろな瞬間で、さまざまな側面に気づきながら、意識して毎日の日常生活を送るように心がけていきます。プログラム終了後もあらゆる面でマインドフルな生活を実践できるようにするためです。

 こうした瞑想実践では、どんなことが起こったかということは重要ではなく、むしろありのままを受け止め、それで大丈夫であることに気づくことに重きが置かれます。よく瞑想をしていると、時にあれこれと考えが生じたり、「明日の仕事はなんだっけ?」などと関係ない考えが出てきたり、などするものです。マインドフルネスではこうしたものが出てきたら、「おお、出てきたな」と思考に気づくことはしますが、出て来た思考の「相手」はしないで、そのまま実践を続けます。これこそがマインドフルなあり方であり、身につけるためには日々の実践を続けることが大切になります。
 でもMBSRは禅などの修行と違い、自分を追い込むものではありません。こうした実践ができない場合にはできないことを責めずに、むしろ「できない」という気持ちに自ら優しく接するように向き合うことが大切になります(これを「自らへの慈しみ(セルフ・コンパッション)」と呼びます)。

 やっていて面白いことに気づきました。それは仕事をしているときだけでなく、休日や旅行など一見すると楽しく過ごせていると思えるときこそ、瞑想やヨガなどの実践が大切だということです。自分で感じたり、考えたり、わかっていたりする(つもりの)ことって、実はすべてではないのですね。メンバーとともに迎えた8週間のフィナーレは本当に感動的でした。カバットジンは「マインドフルネスとは(他との)関係性である」と述べたそうですが、それを実感できる体験でした。


 もちろんマインドフルネスには限界もあります。例えば、現在うつ病の治療中という人は主治医にプログラム参加について事前に相談された方がいいでしょう。
 どのくらいの効果があるかは現在世界中で実証研究が続けられています。もし可能ならば新たな治療と生活の選択肢としてマインドフルネス実践を取り入れることも検討できるかもしれません。MBSRはいくつかの民間団体の主催で首都圏近郊でも開催されています。よろしければチェックしてみて下さい。
posted by MSCOスタッフ at 16:28| マインドフルネス

2016年11月10日

マインドフルネスで「感覚」を取り戻す

マインドフルネス

 先日、知人が「面白いから読んでみて」といって『バカ田大学講義録なのだ!』(文藝春秋社2016)という本を貸してくれました。赤塚不二夫の生誕80年企画として東京大学で開講された「バカ田大学」の講義内容を一冊の本にまとめたものです。
 各方面で活躍している方々が、様々な切り口で赤塚スピリットを語っていて、どの講義もとても面白いのですが、中でも養老孟司さんの講義内容は心理士として非常に興味深いものでした。

 「バカと天才の壁」というテーマの講義の中で、養老さんは、動物と人間の違いを「感覚」と「意識」という切り口で説明しています。
 動物のように「感覚」に依存して生きている生物は、「違い」の上で生きており、たとえば、教室に大勢の人がいると色いろな「違い」を感じてしまい怖くて逃げ出すだろうというのです。
 「意識」に依存して生きている人間は、違うものを「同じ」にする能力(「概念化」する力)を使い、知らない者同士とはいえ、そこにいるのはみんな同じ人間なので、受講者はみな「だいたいこの範囲におさまる行動をとるだろう」と想定し安心するわけです。
 しかし、「意識」ばかりを使っていると、「感覚」による「違い」がわかからなくなり世界は”ぐるぐる回し”になって出口が見えなくなってしまうのだそうです。

 養老さんの講義の結論は「感覚の復権」「感覚を取り戻そう」ということでした。最近、心理学の世界では、「マインドフルネス」という心理療法が注目されていますが、それはまさに養老さんのおっしゃる「感覚の復権」を目指すものではないかと膝を打つ思いがしました。注目を集めているのが、心理の世界だけなくビジネス界でも、というのが面白いところであり、また納得させられるところでもあります。現代に生きる誰もが、肥大化した意識に圧迫されて息苦しい思いをしているのではないでしょうか。

 私は、マインドフルネスの技法のひとつである「ボディスキャン」を自分のカウンセリングの中に取り入れているのですが(仰臥位ではないので厳密には技法とは違うのですが)、身体の「感覚」ひとつひとつに注目してみると、いかに私たちの感覚が多様で、また頼りないものであるかがよくわかります。養老さんが、「意識は増幅装置だ」という言い方をしていますが、私たちは、音や匂い、痛みや痒みなど、いろいろなものが入り混じった状態である生の「感覚」をそのまま感じるということが苦手で、「意識」を使うことでその混沌とした「感覚」の一部を増幅し自分の中に収めやすいように意味のあるものとして整理しようとするようです。

 「感じる」ということは、今この瞬間の自分自身の状態に気づくということです。「感じて気づくこと」が、実は気持ちを楽にし、大きな安心感を得ることにつながるのです。マインドフルネスでは、自分の呼吸に注目する瞑想や歩行瞑想、食べる瞑想、ボディスキャンなどを通じて、「今この瞬間の感覚」をそのまま感じることを目指します。不安感が起きたり否定的な考え方が浮かんでも、それをなくそうとすることはしません。養老さんの言葉を借りれば、意識で増幅せずあるがままを受け入れるということです。あるがままに「感じて気づくこと」で問題解決の糸口が見えてくることもあります。頭で考えずに「感覚」を通してしっかりと自分を感じることで得られる心の変化をカウンセリングの中で確かめてみてはどうでしょうか?
posted by MSCOスタッフ at 14:15| マインドフルネス