2018年01月04日

アクティブイマジネーション(Active imagination)

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  カウンセリングの技法は多くありますが、その中で、夢分析などのようにイメージを活用する技法もまた様々なタイプがあります。その多くは、無意識の世界から生じてくるイメージを受けとめて、そのイメージの内容を理解し体験しようとします。イメージを受けとめようと待つことになるので、受け身的な構えが多いといえるかもしれません。

 それらの構えに比べ、『アクティブイマジネーション』は『アクティブ』=能動的であることが大きな特徴です。無意識から生じてくるイメージを尊重することに変わりはないのですが、そのイメージとの関わり方が異なります。イメージは自然と浮かんでくるわけですが、何を『アクティブ』にするのかというと、はっきりと意識を働かせて、イメージとやりとりして『折衝』するのが大切と言われます。

   具体的には、まずイメージの出発点を決めます。例えば夢にでてきた‘何か’からでも良いですし、心惹かれる写真や絵画なども良いようです。そして、イメージの中でやりとりする相手(人に限らず、動物やモノや風景全体でも)を決めて、相手の様々な特徴を細かく観察します。次第に、イメージは自律性を発揮して動きはじめます。
@イメージと出会ったら、出会いの意味を考える。
Aその上で、こちらに何ができるか、何をしたいのかを考える。
Bなんとなくでなく、「こういう理由でこれを選ぶ」と意識しながら選ぶこと。
Cそれをイメージの中で行動に移す。
Dイメージは、それに応えて何がしかの反応を返してくる。
記録をとりながら、この@からDを繰り返していきます。イメージが無意識からのモノでなく、勝手な想像のように思えても大丈夫です。意識が作っているようでも無意識からの要素が入らないイメージなどないのです。

    以下に、樹木と牛と牛飼いが描かれた絵画から『アクティブイマジネーション』を試みた例を紹介します。
 「私は畑での農作業をしている。そこへ牛に乗った旅人が通りかかる。旅人がこちらへ笑顔を向けて『ご精がでますね』と話しかけてくる。私は農作業の手を止めて『こんにちは』と応じる。旅人はその日泊まる宿へ向かう道を尋ね、私はそれに答える。私は、生き生きした牛にl惹かれて撫でると、あたたかい生命感が伝わり心地よくなる。すると、旅人が牛をくれると言う。『是非世話してやってほしい』と言われ、それなら、と応じる。旅人は宿に向かう。私は牛とともに見送りながら、うれしい反面、ちゃんと世話をしていけるか少し不安も感じている。」

   この『アクティブイマジネーション』の意味を解釈するには、牛の象徴性や、旅人が宿を尋ねてくる物語の意味するモノなどを深めることも大切になるでしょうが、まず最初に「私」が無意識とどのように関わっていこうとしていいるかを理解することが大切なポイントです。
   「私」は、旅人とアクティブに好意的に関わり、少し不安に感じながらも旅人からもたらされた新たな生命とともに生きていくことを決めています。これは、「私」という自我がこれまで知らなかった自分の中のエネルギーやメッセージを受け入れて、個性化の道(自分らしくあるための心の成熟)に向かおうとしていると言えるようです。

    この例のようにイメージにアクティブに関わり、折衝することで、その世界が広く豊かに展開していきます。そこから、自我にとって有益な気付きや変化が生まれることになっていくと言われています。
(参考文献:「無意識と出会う」老松克博.2004.トランスビュー)
タグ:イメージ
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2015年11月03日

ドリームワーク(DreamWwork)

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夢をいかす「ドリームワーク」の技法について
 「ドリームワーク」は、80年代からユング派の分析家R.ボスナックが研究、実践を重ねる心理療法の技法です。毎年数カ国でワークショップやセミナーを開催し、日本でも毎年ワークショップが開かれています。R.ボスナックの事例からは、夢として表れた心と身体の深層が再体験される様が生き生きと伝わってきます。

 先日、「ドリームワーク」を体験する機会を得て、実際に自分の夢をワークしてきました。夢の詳細は省きますが、夢にでてきた若い女性のしなやかな身体の動きや隠遁生活をおくるお爺さんの味わいある笑顔などを、自分の中から表れたイメージとしてひとつひとつ丁寧に意識を向け、再体験しました。それは、日常の意識が慣れた意識の状態=「自分」と思っている以外の「自分」を感じ、それを理屈でなく身体の感覚で認め、受け入れるような体験でした。

 ボスナックの著書にあげられている夢とそのワークを簡単に紹介します(『ドリームワーク』2004.金剛出版)。夢は、米国の911の後、直接の被害はなかったものの、多くの人々と同様に大きな衝撃を受けた米国女性のものです。


 〈夢〉 『同僚と廊下を歩いている。テロリストのような男がいる。その男は私にドンとぶつかって通り過ぎる。私は縮みあがり怯えている。その男を追いかけている別のテロリストが私にぶつかり、何か突き刺された感じがして衝撃を感じた。実は、その男が私の着慣れたシャツのポケットに、何か錠剤のようなものを突っ込んでいったのだ。』

 ワークは、次のように進みます。はじめの段階でセラピストは、夢見手が夢の環境に戻れるように手助けします。夢見手は、ゆっくりと身体の感覚も使って、詳細に夢の環境を思い出します。
─彼女が、歩いている廊下は広い?灯りはどんな感じ?はじめに男を見たときは、どこにいた?どのくらい離れていた?

 第2段階は、夢見手の心理的・身体的な体験、その出来事が起こっている間の彼女の身体はどんな感じなのか、に焦点をあてます。
─彼女は恐怖で縮みあがり、しびれて無感覚になったその状況を感じ続けます。

 第3段階としては、「衝撃」の瞬間の触覚に焦点をあてます。
─身の縮む感じ、激しい無力感、むかむかして少し吐き気も感じます。

 第4段階は、ワークのもっともデリケートな部分。自分と異なる人物を体験します。「テロリスト」のような自分と異なる存在、この馴染みのない主体に、夢の中での存在の感じをゆっくりと詳細になぞり同一化し、身体感覚を使って体験します。
─彼女は、テロリストの、つまり恐怖を撒き散らす者の体験の中に入ると、「南極のように冷たい」と言いました。それが、彼女が体験した911の衝撃と恐怖を体現している「テロリスト」の存在の核にあると考えられます。

 第5段階。彼女は、セラピストから「熱い筋肉で覆われた冷たい氷」と同時に、自我が感じた縮みあがる感覚を感じるように促されます。
─彼女は、夢の中で体現された恐怖と氷の力の両方を身体全体で感じます。しばらくして、彼女はそこから脱し、「不思議だわ。どうしようもない感じがなくなって、何とかやれる気がしてきた」と言いました。声に力があります。夢の後半の「シャツのポケットに入れられた錠剤」は、「戦いの中で用いる道具を手渡されたようだ」とも言いました。


 ドリームワークによって、無力感に圧倒された体験をそれまでと異なる感覚で再体験し、そこからそれまでは意識になかった異なる体感が生まれ、どうしようもない無力感の状態から、自分に力を感じることができるようになっています。希望が導き出されたと言えるように思います。

 人が夢の中に何を見出すかはさまざまです。単なるレム睡眠の状態での脳の活動とも言えるでしょうし、起きている間の記憶のなごりととらえる場合もあります。とはいえ、夢は現実の体験と同様に感情や身体感覚をともなうリアルなものでもあります。夢とどう向き合うのかによって、自分の中にある豊かなイメージ群とそこにある想像力を、現実の自分に生かしていくことができるのだと思います。
posted by MSCOスタッフ at 01:06| カウンセリング・キーワード

2014年11月24日

個人化(personalization)

自分のせいだと思い込む

 認知行動療法では、自分自身の非現実的な思い込みに気づき、それを修正していくことを目指します。非現実的な思い込みにはいくつか典型的なものがありますが、今回はその中の「個人化(personalization)」を取り上げてみたいと思います。「個人化」とは、「自己関連づけ」とも言われ、他者の否定的なふるまいをすべて自分のせいだと思い込むことを言います。

「相手の気分を自分のせいにしていませんか」

 たとえば、家族やパートナーの機嫌が悪いとき、皆さんはどんなふうに考えるでしょうか。「私が何かしたのだろうか」と不安になり「きっと、私のあのときの態度が良くなかったのだ」と考え「だから私のせいだ」と思ったことが誰でも一度はあるはずです。

 実際、他者の不機嫌が自分と関係していることもあるでしょう。でも、まったく関係がないことも実は多いものです。たとえば、学校や職場で嫌なことがあったとか、大きなミスをしてしまって、その後始末をどうしたものかと悩んでいるとか。

 自分と関係のないことで相手が不機嫌になっているのに「私のせいだ」と思い込むのは、自分自身に対する攻撃です。私たちは、何かにつけ自分を攻撃しようとします。それは、誰の心の中にも「受け入れたくない自分」がいるからではないでしょうか。自分で自分を攻撃することで、自分の嫌いな部分をないものにしようとするのかもしれません。   

 また、相手が不機嫌な態度でもって自分を責めているように感じる、つまり相手が自分を攻撃しているように感じられることもあるでしょう。それは、前述のように思い込みの場合もあれば、実際、相手が意図的にそのように振る舞っていることもあります。でも、相手の不機嫌の原因が自分に関係があってもなくても、その気分自体を生じさせているのは相手自身なのですから、それは相手の問題です。いくら相手から不機嫌の責任を取れ、と言われたところで、私たちにはどうすることもできません。その人の感情をコントロールできるのはその人自身だけです。でも、私たちは、何故か相手の感情に対して責任を取ろうとするところがあります。それはもしかしたら、誰でも他者を自分の思い通りに動かしたい、動かすことができるという万能的な空想を抱いているからなのかもしれません。
 
 身近な人あるいは自分に関係のある他者の不機嫌な表情や気持ちの沈んだ表情は、私たちを不安にさせます。それは、他者を思い通りに動かすことができるという万能的な空想とは裏腹に、誰も自分の思い通りにはならないことがわかっているからでしょう。自分の思い通りにはならない、予測できないことは人を不安にさせます。他者を思い通りに動かすなんて非現実的だとわかっていながら、人は自身の不安を軽減させるために自分の努力次第で相手の気分を変えることができるはずだ、と思い込もうとするのです。
posted by MSCOスタッフ at 22:50| カウンセリング・キーワード

2014年04月25日

破局視(Catastrophizing)

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 うつや不安等のつらい心理症状を引き起こすもとになっている考え方を、認知行動療法では「認知の歪み」と捉えます。簡単に言えば「良くない思い込み」ということです。その「良くない思い込み」には、その人特有のものもありますが、誰でも抱きやすい典型的なものもいくつかあります。
 そのひとつに「破局視(catastrophizing)」があります「破局視」は、「運命の先読み(fortune telling)」とも言われ、他の可能性を考慮せずに未来を否定的に予言することをいいます。

 たとえば、みなさんは、こんなことを思ったことがありませんか。「元日の朝にこんなに嫌なことがあったのだから、今年は最悪な1年になるに違いない」あるいは「私にはあんな難しい事はできない.私には能力が無いんだ」など。

 現実的に考えれば、元日も他の日と同じ人生の中の1日に過ぎませんし、その日の朝に嫌なことがあったからといってその年が最悪になるという根拠は何もありません。また、何が「簡単なこと」で何が「難しいこと」なのかは個人差があり、自分が「簡単なこと」だと思っていても、他人にとっては「難しいこと」だったりします。

 何故私たちは、何の根拠もないのにそのように思い込んでしまうのでしょうか。それは、そうやって決めつけて思考を中断することによって、不安感や自己否定感などのもやもやとした嫌な感情と向き合わなくても済む「気がする」からです。また、否定的な結果を予測しておけば、うまくいかなかったときに気持ちが落ち込まずに済む「気がする」のです。

 しかし、実際には、行動を起こす以前に未来を決めつけているわけですから、自身の可能性を限定することになり、結果的にはさらに自己否定感や不安感を高め、逃げ場のない追い詰められた気持ちになってしまうでしょう。
 誰にとっても未来は不安なものです。それは、自分でコントロールすることができないからです。私たちは、破局的な未来予測であっても、決めつけることで未来を自身でコントロールできているという感覚を手に入れ、不安感から身を守ろうとするのです。

 「認知の歪み」とは、このように、もともとは自分自身を守るために行っているにもかかわらず逆効果を招いている考え方と言い換えることができるでしょう。「破局視」を手放して現実的な可能性を考えるということは、不安感に身をさらし、自身の限界を受け入れることです。それは、つらいことのように思えますが、実は自然に身を委ねることで自身を解放し、より現実的で確実な自信を手に入れることにつながります。
 認知行動療法とは、このように利用価値のない「非合理的な認知」を自覚し、自分を守るために有効な「合理的な認知」に置き換えていく作業なのです。
posted by MSCOスタッフ at 18:05| カウンセリング・キーワード

2011年08月10日

依存と自立(Dependence & Independence)

依存と自立

 欲しい洋服が買えた! 仕事の後のお酒は最高! 付き合っている人と会っていると心が落ち着く・・・、など、人は、日々の沢山のストレスの中で生きていくために、人に頼ったり、欲しいものを得て心を満たしたり・・・とやりくりをしています。

 これらは、人が生きていくためには、必要な「依存」でもあります。ただ、「依存」が度を越すと、生活が立ち行かなくなったり、まわりの人に迷惑をかけたり・・・そして一番辛いのは、自分自身です。

 本来、大人になると、主体性を持った人間として、支えたり、支えられたり、助けあいながら、ほどよく依存しています。ただ、幼少の頃からの体験で、親や周囲の大人に、ありのままの自分を受け入れてもらえない体験や、何があっても守られているという安心感が得られにくいと、世の中や、人に対して安心感が持てず、淋しさや恐怖、孤独感を抱えたまま大人になる場合もあります。その場合、人にほどよく依存することができず、不安や孤独を紛らわすために、極端なまでに依存しすぎてしまうことがあります。

 「依存」には、「人に対する依存」、「物に対する依存」、「プロセスに対する依存」があります。ここに少し例をあげてみます。
*人に対する依存:「家族の世話をやきすぎてしまう」、「恋人を束縛してしまう」など
*物に対する依存:「アルコールを沢山のんでしまう」、「過食してしまう」など
*プロセスに対する依存:「買い物を大量にしてしまう」、「オーバーワーク」など

これらについて、人間関係が立ち行かなくなったり、自分の身体をこわしたり・・・と何らかの不具合が出てきたら要注意です。まずは、そんな自分に気付くことが、自立への第1歩です。

 そして、淋しい自分、孤独な自分に気づいてあげることは、自分を満たしてあげるためにはどうしたらいいのか、と考えるためのきっかけにもなります。
「人とつながる」、「好きなこと、ものを増やす」、「自分にやさしくなる」など好ましい依存のレパートリーを増やして実践する体験は大切です。これらのほどよい依存を実感できると、安心感のもと、少しずつ自立していくことも不可能ではありません。ご自分で実践してみて、やりづらい場合、もしくは家族、周囲の人が困っている場合、医療機関、カウンセリング機関などでも適切な援助を受けることができます。
タグ:依存
posted by MSCOスタッフ at 17:16| カウンセリング・キーワード

2011年07月01日

アタッチメント(Attachment)

母子

 アタッチメントとは、特定の人と人との間に形成される、時間や空間を超えて持続する心理的な結びつきと定義されます。それがどのように形成されるかは、ボールビィの研究で詳しく述べられています。乳児は、5〜7か月ごろになると、母親を見て笑いかけたり、母親が去ると泣いたりするようになります。これは母親との間に「アタッチメント」が形成されたと考えることができます。さらに知らない人が近づくを怖がって泣いたりするようになりますが、これは「人見知り」という、よく知られた現象です。
 人間の赤ちゃんは、人との接近や接触を求める、生物学的な傾向を持って誕生し、母親との一定量以上の相互作用を通して愛着が形成されるといわれています。ハーロウ(Harlow)はこの過程をアカゲザルを用いて実験的に確かめました。それによると、アタッチメントの形成には、ミルク(餌)よりも、スキンシップの方が大切であることがわかりました。こうした母子関係の微妙なあやについては、ウィニコット(Winnicott,D.W.)がきめ細かく述べています。こうした相互作用を通して、エリクソン(Erikson,E.H.)のいう「基本的信頼感」が形成され、これはサリヴァン(Sullivan,H.S.)のいう「安全感」などとも共通する概念です。
 最近では、乳児と保護者との観察を通しての研究や、実験的な場面を組んでの研究もされています。またその延長で大人のアタッチメントについても研究されてきています。
 乳児期に適切な母性的なかかわりを受けられなかったこと(例えば、Maternal deprivation:母性剥奪)が、その後に重要な影響を残すと考えられがちですが、単純に因果論的に考えてしまうことは、治療的に意味がないばかりでなく、有害でもあります。すぐれた芸術家の伝記を見てもわかるように、人間の心の成長は、とても複雑で個性的です。そうした心の在り方を尊重する姿勢が大切なのだろうと思います。
posted by MSCOスタッフ at 00:00| カウンセリング・キーワード

2011年06月03日

喪の作業(Mourning work)

喪の作業

 対象喪失(Object loss)においてみられる心理過程のことです。誰か大切な親しい関係の人を何らかのことで失った場合、普通に見られる過程です。失った直後は、深刻な苦痛に悩み、外のことに対する興味もなく、愛の対象を新しく選ぶ力もなく、死者の思い出に関わること以外のあらゆる行動を回避したりするものですが、これは悲哀の状態と呼ばれるものです。健全な悲哀であれば、時間が経過していくにつれて、克服されていきます。すなわち、追憶や期待によっていまだに心の中では結び付いている対象が存在するにもかかわらず、現実は愛する対象はもういないのだという判断をくだせる、現実検討力が回復してきます。次第に意欲も出てきて、抑制されていた行動も回復してきます。
 何らかの要因で悲哀を感じられなかったり、対象に向かうはずの攻撃性が自分自身に反転するなどで、この喪の作業が滞ってしまうことがあります。普通に悲しめない状態といえるでしょう。苦しいことですが、正常に悲哀を体験することができて、失われた対象からの拘束も解けるようです。
 クライン(Klein,M.)は、喪の作業の起源を乳児期の体験にあると考えました。クラインは、よい対象(Good object)の喪失を恐れて悲しみ心配する抑うつ的態勢(Depressive position)を償いを行うことで克服することが、喪の作業の本質であると述べています。自分の攻撃的衝動が直接愛の対象に向かうように感じられるので、強い罪悪感が生じ、全体としての母親を失うことへの恐怖が増大し、悲哀に似た状態になり、こうした抑うつ的感情の体験は、心的現実に対する理解につながり、自我の統合を促進するというのです。傷ついた対象を償い、保護しようという欲動は、相手をありのままにうけいれるという、より満たされた対象関係と昇華に道を開き、次第に統合性を高めていくことになります。悲哀の状態を通して、実際に失った愛する対象を復元しているのですが、同時に、自分の中の最初の愛する対象、つまりよい両親像も再確立しているのだと言っています。
 長い人生の中で、出会って別れては繰り返されることですが、それを通して心の中に確かなものを育て、成長していくといえるのかもしれません。
タグ:喪の作業
posted by MSCOスタッフ at 15:33| カウンセリング・キーワード

2011年02月23日

ストローク(Stroke)

ストローク

 ストロークとは、相手の存在や価値を認めるような様々な刺激のことをいいます。 辞書的な意味では「なでる,さする」という意味で、スキンシップも含め、言語的、非言語的な他者への働きかけです。
・たとえば、スキンシップ。子どもを抱きしめる,握手をする,肩を抱く。
・言語でのやりとり。あいさつをする,話しかける,褒める,励ますなど。
・表情や態度。うなづく,見つめる,よく話を聞く、気にかけるなど。 


 私たちは、無意識に肯定的なストロークを求めるもので、それが得られない時には,否定的なストロークを求めてしまいます。
 たとえば、親から褒められることがない子どもが,注意を引けるなら何でもいい、とでも思っているかのように、叱られるようなことをしてしまう。肯定的なストロークが与えられないままだと、否定的なストロークを挑発するような行動をとることが起きてしまう。
私たちにとって、ストロークはそれほど必要なものとも言えます。

 また、人は条件付きのストロークを与えられ続けると,自分はストロークを受けるに値しない人間であると感じるようになってしまいます。そして、自信が持てず、いつでも他人の評価や価値観に左右されるようになることもあるでしょう。
さらに、ストロークが与えられないままだと、自分は誰にも気に留めてもらえない、いてもいなくても良いのだと感じてしまうことすらあります。

 「ストロークは銀行と同じ。相手に与えてばかりいると,そのうち『預金』が底をついてしまう」という言い回しがあります。
 自分の『預金』を増やしていくには『ストロークプラン』を立て、コミュニケーションを工夫して人間関係をより充実したものにすることが大切です。

 『ストロークプラン』のポイントは以下です。
(1)与えられるストロークがあれば,惜しみなく与えよう!
周囲の人に、照れずに、気おわすに、ちょっとしたことから。
(2)欲しいストロークは要求しよう!
明るく,楽しく要求するようなプランづくりをしてみましょう。身近な人の名前とその人から欲しいストロークを紙に書き出してみてもいいかもしれません。
(3)欲しいと思っているストロークが来たら,喜んで受け取ろう!
謙遜の美徳よりも,素直に「ありがとう」「とてもうれしいです」と素直に受ければよいのです。 
(4)欲しくない否定的ストロークが来たら、上手に断ろう!
「あなたはそう思うのね」「なるほど,そうかもね」など,ひとつの意見として冷静に対処しましょう。
(5)ストロークが不足したら,自分で自分にストロークを与えよう!
知っているようで知らないのが自分のこと。自分を振り返って、認めてあげること、褒めてあげることも意外と大切なストローク『預金』です。
タグ:ストローク
posted by MSCOスタッフ at 22:24| カウンセリング・キーワード

2010年12月25日

ストレスコーピング(Stress coping)  vol.3

ストレスコーピング

成長させてくれるストレス
ストレスというと、一般的にどうも悪いもの、無い方がよいものと思われがちです。カウンセリングでも、「ストレスを無くしてほしい」という訴えを聞く事は、とても多いように思います。

 しかし、「ストレス」という概念を提唱したH..セリエという生理学者は、実はストレスの良い側面にも言及しています。このことはなかなか一般には知られていないようなのですが、彼はストレス(stress)を「良いストレス(eustress)」と、「悪いストレス(distress)」に分け、「ストレスは生活のスパイスである」とも述べています。

 なんだかコレステロールの善玉、悪玉というのにも似ていますが、この場合の「悪いストレス」とは、例えば、過労、パワハラやいじめなどの悪い人間関係など、自分のからだやこころが苦しくなったり、嫌な気分になったり、やる気をなくしたりするような刺激やその状態のことをいいます。

 一方の「人生のスパイス・良いストレスeustress」は、一流のスポーツ選手がオリンピックを目指す場合など、自分の意欲を奮い立たせてくれたり、充実感を持たせてくれる刺激やその状態のことをいいます。こうした「良いストレス」が少ないと、人生は豊かにはならない、ともいわれているのですが、考えてみれば、恋愛などもこうしたストレスとして体験されていることは多いように思いますし、その中で我々が傷つきながら成長していくことが多いのも、一般によく体験されていることなのではないでしょうか。

 では、どうしたらストレスとうまく付き合っていきながら「人生のスパイス」を味わえるのか、ということなのですが、ここで問題になるのは、 (1)刺激(ストレッサー)の受け止め方(2)ストレス・レベルのバランス、が重要になってくるといわれています。

(1)ストレスの受け止め方
 これは、同じ刺激(ストレッサー)でも、受け止め方によって「良いストレス」になるか「悪いストレス」になるかが変わってくる、ということです。例えば、将来の目標や応援してくれる家族などの資源、対処能力(ストレス・コーピング)があって、『自分にも努力すればなんとかやれそうだ』という気持ち(自己効力感)のある受験生の場合、受験勉強も「成長を促す、良いストレス」として体験される可能性はとても高いと考えられます。一方で、『強制されためんどうな作業だし、努力しても自分の力では無理・無駄なんじゃないか』と思っていて、対処能力も「自分にもできそうだ」という手ごたえもない受験生にとっては、勉強はひたすら惨めで苦痛な、「悪いストレス」としてしか体験されない可能性があるといえます。

(2)ストレスのバランス
 ストレスと生産性を研究した実験の結果では、適当なストレスによって生産性は高まるのであって、ストレスは強すぎても弱すぎても生産性は上がらない、ということが知られています(ヤーキズ・ドッドソンの法則)。つまり、いかに能力のある人でも、絶対に無理な量の仕事をひどい環境の中でやらされれば、バランスを崩してしまって、本来あるパフォーマンスさえ発揮できなくなってしまう、ということです。また、逆に刺激が全くなかったりする状態、例えば意欲も能力もあるのに、簡単すぎる仕事を少ししか与えられない、といった状況だとしたら、せっかくの能力も持て余して生産性は落ちてしまいますし、興味や意欲もなくなってしまって、その人の貴重な成長する機会をも逸してしまう、ということにもなってしまうといえるのです。

★「人生のスパイス」を味わうために

 よって、我々がストレスとうまく付き合い、「人生のスパイス」を味わいながら成長に活かしていくためには、負担になりすぎない程度に関心のあることに挑戦してみるなど、いつも適度な刺激、「良いストレス」を持つように心がけておくことが大切かと思われます。一方で、「悪いストレス」についてはできるだけ少なくしていくことが一番ですが・・・なかなか現実はそうもいきませんし、逃げてばかりいても成長はしていきません。よって、現状のストレス状態を自覚しながらも、外界刺激の受け止め方を柔軟にしていくこと、またさまざまなストレスへの対処能力を培っていくこと等によって、ストレスへの耐性をつけたり、周囲の助けも借りながら目の前の問題を成長機会として転換することができるよう努力していくことが、非常に重要になってくるものと思われます。カウンセリングは、いわばそうしたプロセスを個別に、専門的に支援するもの、ということができるでしょう。
posted by MSCOスタッフ at 17:44| カウンセリング・キーワード

2010年11月01日

ストレスコーピング(Stress coping)  vol.2

ストレスコーピング

ストレスコーピングの例
 前回のストレスコーピングの説明で、自分は、この方法を使っているなとか、あまりコーピングしていないかも・・・など、少しご自分の日常のコーピングのパターンを振り返られた方もいらっしゃるかもしれません。

 今回は、ストレスコーピングを実際やってみるとどんな風になるの?という例を「ストレスの自覚」、「問題焦点型のコーピング(問題中心型のコーピング)」、「情動焦点型のコーピング(情動中心型のコーピング」の観点からみてみたいと思います。

会社員Aさんの場合

 会社で、様々なストレスにより、うつ病を繰り返してしまうAさんがいました。もう繰り返すのは嫌だなと思い、復職後は、自分の今の体調に合ったストレスコーピングを使うことを目標にしました。

 まずは、再発しないために、ストレスを自覚することが必要でした。もともと根をつめてしまうタイプのAさんなので、気付かぬうちに、オーバーワークをしてしまいます。そこで、上司にも理解してもらい、しばらくは、定時で仕事を切り上げることにしました。このように、時間に限りをもうけることで、無理をしすぎないようにしました(ストレスの自覚)。

 もうひとつは、Aさんは、ストレスがたまると眠れなくなるというサインが出るので、このサインが1日でも出たら、何かストレスになっていることがないかを自分で考えるようになりました(ストレスの自覚)

 ストレスの自覚ができるようになれば、あとは、それをどうコーピングするかです。Aさんは、どんなストレスコーピングをしたのでしょう。

 Aさんの自覚したストレスの大きなものは、会社の上司から、よく思われたいという思いが強く、上司から言われたことは、どんなことでも断らずに仕事をしていたため、知らず知らずに仕事も増え、無理が積み重なってしまうということでした。

つまり、これまでのAさんのストレスコーピングは、自分がひたすら我慢して耐える、という方法だったのです。ただ、度をこえてしまうと、コーピングにならず、病気となってあらわれてしまったのでした。

Aさんは、復帰して、仕事も軌道にのり、まわりの人もAさんが病気だったということの認識がうすれ、仕事が増えてきて、しんどいと感じるようになりました。そこでAさんは、「自分は、まだうつ病の治療中なので、無理はできない」ということと、「自分はここまでの仕事はできるが、これ以上はできかねる」ということを上司に伝えました(問題焦点型のコーピング)。このことで、上司にもAさんの立場を理解してもらうことができました。

また、毎日仕事に取り組むということは、それなりにストレスが積み重なるものです。Aさんは、休みの日には、気分転換の散歩、庭仕事をするなど、なるべく仕事と離れて、ストレス発散を心がけました(情動焦点型のコーピング)

また、月1回継続しているカウンセリングにも通い、自分の1ヶ月を振り返って話をすることで、自分が無理をしないで働いているかどうかの確認と修正を、カウンセラーと行いました(情動焦点型・問題焦点型のコーピング)

このように、Aさんは、ストレスを自覚できるように工夫をしながら、問題中心型コーピング、情動中心型コーピングをうまく使いつつ、自分のストレスを、我慢するだけでなく、ときには向き合って対処する方法も身につけることができました。

人によって、どういったストレスコーピングを選ぶかは様々です。日頃から、なるべく沢山のストレスコーピングを見つけておくと、大変なときでも、すぐ思い出して対処することができるようになります。
posted by MSCOスタッフ at 13:55| カウンセリング・キーワード

2010年10月11日

ストレスコーピング(Stress coping)  vol.1

ストレスコーピング

 カウンセリングで使われる考え方の中から、日頃のメンタルヘルスやストレス対策にも活用できるようなキーワードを紹介します。コーナー1回目は“ストレスコーピング”です。

 ストレスコーピングとは、ストレス対処法のことです。
「ストレスがたまっているな」と感じると、誰でもそれを軽くしようと運動をしてみたり旅行に出かけたりなど、あれこれ工夫をしてみるもの。つまり、ストレスコーピングとは誰もが日常的に行っていることです。
 でも、いつも同じやり方が効果的であるとは限りません。ここでは、コーピングの方法をいくつかご紹介してみたいと思います。

ストレスコーピングの方法

1.まずはストレスを自覚することから
 ストレスがたまっているのに、それに気づかない方が時々います。ストレスが高まると肩が凝る、下痢をする、苛々しやすい、集中力が低下する、など心身に様々なサインが現れます。
 自分の状態をいつもモニタリングしていると、ストレスを感じやすいパターンやストレスが高まったときの心とからだの変化に気づくようになります。

2.問題焦点型のコーピング(問題中心型のコーピング)
 ストレスの原因そのものに対して問題解決的に取り組むやり方です。
 たとえば「自分のおかれた立場を理解してもらうよう周囲にはたらきかける」「自分ひとりで仕事を抱えず他の人にまかせる」「自分の考え方やり方が適切かどうか人から意見をもらう」「自分の過去のパターンを振り返って検証する」など。ストレスに対する「向き合い型」のコーピング法といえます。

3.情動焦点型のコーピング(情動中心型のコーピング)
 ストレスの原因ではなく結果に対処するやり方です。
 たとえば、「別のことをして気を紛らす」「同僚と愚痴を言い合う」など。ストレスに対する「発散型」のコーピング法といえます。

4.効果的なストレスコーピング法とは
 問題中心型のコーピングがうまくいくためには、情動中心型のコーピングが行われることによって感情がうまく調節されている必要があります。また、情動中心のコーピングだけでは状況の変化、自分自身の変化は得られず、次第に無気力になってしまうでしょう。
 効果的なストレスコーピングとは、自分自身の感情を調節しながら、ストレス因にきちんと向き合うことです。
posted by MSCOスタッフ at 20:36| カウンセリング・キーワード