2014年04月25日

破局視(Catastrophizing)

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 うつや不安等のつらい心理症状を引き起こすもとになっている考え方を、認知行動療法では「認知の歪み」と捉えます。簡単に言えば「良くない思い込み」ということです。その「良くない思い込み」には、その人特有のものもありますが、誰でも抱きやすい典型的なものもいくつかあります。
 そのひとつに「破局視(catastrophizing)」があります「破局視」は、「運命の先読み(fortune telling)」とも言われ、他の可能性を考慮せずに未来を否定的に予言することをいいます。

 たとえば、みなさんは、こんなことを思ったことがありませんか。「元日の朝にこんなに嫌なことがあったのだから、今年は最悪な1年になるに違いない」あるいは「私にはあんな難しい事はできない.私には能力が無いんだ」など。

 現実的に考えれば、元日も他の日と同じ人生の中の1日に過ぎませんし、その日の朝に嫌なことがあったからといってその年が最悪になるという根拠は何もありません。また、何が「簡単なこと」で何が「難しいこと」なのかは個人差があり、自分が「簡単なこと」だと思っていても、他人にとっては「難しいこと」だったりします。

 何故私たちは、何の根拠もないのにそのように思い込んでしまうのでしょうか。それは、そうやって決めつけて思考を中断することによって、不安感や自己否定感などのもやもやとした嫌な感情と向き合わなくても済む「気がする」からです。また、否定的な結果を予測しておけば、うまくいかなかったときに気持ちが落ち込まずに済む「気がする」のです。

 しかし、実際には、行動を起こす以前に未来を決めつけているわけですから、自身の可能性を限定することになり、結果的にはさらに自己否定感や不安感を高め、逃げ場のない追い詰められた気持ちになってしまうでしょう。
 誰にとっても未来は不安なものです。それは、自分でコントロールすることができないからです。私たちは、破局的な未来予測であっても、決めつけることで未来を自身でコントロールできているという感覚を手に入れ、不安感から身を守ろうとするのです。

 「認知の歪み」とは、このように、もともとは自分自身を守るために行っているにもかかわらず逆効果を招いている考え方と言い換えることができるでしょう。「破局視」を手放して現実的な可能性を考えるということは、不安感に身をさらし、自身の限界を受け入れることです。それは、つらいことのように思えますが、実は自然に身を委ねることで自身を解放し、より現実的で確実な自信を手に入れることにつながります。
 認知行動療法とは、このように利用価値のない「非合理的な認知」を自覚し、自分を守るために有効な「合理的な認知」に置き換えていく作業なのです。
posted by MSCOスタッフ at 18:05| カウンセリング・キーワード