2014年02月11日

「想像力」がもたらす「力」

砂団子

 砂場で遊ぶ3歳の子どもたちの話です。砂のお団子を作って並べています。ある子どもが、そばにいた保育者に「お団子をどうぞ」と差し出します。受け取った保育者は食べるまねをしてから「ごちそうさま。ああ美味しい。クリームの味がしますね」と応えました。別のクラスでは別の保育者が、食べるまねの後「ごちそうさま。ああ美味しい」と応えました。

 2人の保育者の応対は同じように見えるけれど、この後の子どもたちの行動はまるで違ったものになりました。「クリームの味」と言われた子どものクラスでは「こんどはいちご味」「きな粉がついてるの」水に砂を混ぜて「コーヒーをどうぞ」とレストランごっこに発展していきました。しかし別のクラスは、相変わらず「お団子どうぞ」を繰り返し、たくさん作ったり並べる遊びを続けています。

 この話は、内田伸子という方の想像力を育てることを考える本にあった内容です。この例から言えることは、大人が、子どもに代わって“見えないものを見て、言葉に表す”ことをしたかどうかで、2つのクラスの子どもたちの想像活動の中身が変わり、そこから行動と体験そのものが、驚くほど質的に変わってしまったということです。


 想像力を育てること、引き出すこと。これは子どもの話だけではありません。
 ユング心理学では、想像力が生み出すイメージには、悩みや行き詰まりの原因となった葛藤や矛盾を、まとめ上げ進展させる性質があると言われています。イメージの力によって、出口が見つからない行き詰まりは角度を変え、出口を見出すことができたり、抱えきれなくなった問題はまとまりを持つことで向き合うことができるようになります。そして、次のステップへの可能性が動き出してくるといえます。

 「想像力」を自由に働かせることで、自分の心の世界に埋れている生きたイメージをとらえる、向き合う、体験する。それによって、一面的でなく多面的・柔軟な認知や思考をしていくことが可能になります。そして、自分でも知らなかった豊かな世界や可能性が自分の中にあることを発見する。

 カウンセリングをしていて、クライアントが「想像力」を働かせることを通して自分の力を引き出していくのを目にするたびに「想像力」がもたらすものに惹きつけられます。子どもたちの例のように「見えないものを見て言葉に表す─想像力」を活かして、それまでの自分の「繰り返し」を脱し、視界を広げて、のびやかに踏み出して行く。それ自体、とても創造的なことに思えます。
posted by MSCOスタッフ at 00:00| 心理エッセイ