2013年05月20日

「べき思考」にとらわれない

べき思考

 カウンセリングの中でよく語られる内容のひとつに「自分はなんでも否定的に考えてしまう。もっと前向きに考えられるようになりたい」というものがあります。

 たとえば、誰かのちょっとした発言や態度に否定的なニュアンスを感じ取り、「私はあの人から嫌われているのではないか」と不安になったり、ちょっとした仕事上のミスを気に病んで「今回のことで上司に仕事のできない奴と思われたに違いない。これで今後の評価が決まったも同然だ」と思い込むなど、私たちは誰でも良くない未来を想像しがちなものですし、それを自分に信じ込ませることも得意です。

 明るい未来を想像したいのにできないことが、冒頭のような発言になるわけです。それがなぜできないのか?問題は「もっと前向きに考えられるようになりたい」という欲求や希望が、次第にかたちを変えてしまうことです。

 私たちは、「こうありたい」という自分の欲求を、いつの間にか「こうあるべき」に変化させてしまう傾向があります。おそらく「こうありたい」という気持ちは重心が上の方にあって、バランスが取りにくいように感じられるのではないでしょうか。「こうありたい、と思うのならそうなろうよ」というところから、「そうなるためにはそのための努力すべきだ」となり「こうあるべきだ」という簡潔で重心の低い言葉に落ち着くように思います。つまり、「前向きになりたい」がいつの間にか「前向きであるべき」に変化してしまうのです。

 「べき思考」という言葉をご存じでしょうか。「約束は守るべきだ」とか「常に冷静であるべきだ」など、「〜べきである」という考え方のことです。認知(行動)療法では、人間の認知の歪みのひとつに、この「べき思考」をあげています。‘認知の歪み’とは、現実離れしたものの見方、考え方だということです。

 確かに「こうあるべき」という事柄は世の中にたくさんありますが、何でも「こうあるべきだ」「こうでなくてはならない」という考え方に当てはめてしまうと息苦しくなってしまいます。最初は、「もっと楽な気持ちで過ごしたい」という素朴な欲求だったものが「常に前向きであるべきだ」という非現実的なルールに変換され、逆に自分を追い詰めることになっては、本末転倒です。

 私たちはみな、自分がより良くあることを願うものです。しかし、そのために自分自身に無理難題を押しつけてしまいがちです。みなさんはいかがですか。自分が「べき思考」にとらわれていないか、少し考えてみてはいかがでしょうか。
タグ:べき思考
posted by MSCOスタッフ at 10:25| セルフメンタルケアのコツ