2011年06月03日

喪の作業(Mourning work)

喪の作業

 対象喪失(Object loss)においてみられる心理過程のことです。誰か大切な親しい関係の人を何らかのことで失った場合、普通に見られる過程です。失った直後は、深刻な苦痛に悩み、外のことに対する興味もなく、愛の対象を新しく選ぶ力もなく、死者の思い出に関わること以外のあらゆる行動を回避したりするものですが、これは悲哀の状態と呼ばれるものです。健全な悲哀であれば、時間が経過していくにつれて、克服されていきます。すなわち、追憶や期待によっていまだに心の中では結び付いている対象が存在するにもかかわらず、現実は愛する対象はもういないのだという判断をくだせる、現実検討力が回復してきます。次第に意欲も出てきて、抑制されていた行動も回復してきます。
 何らかの要因で悲哀を感じられなかったり、対象に向かうはずの攻撃性が自分自身に反転するなどで、この喪の作業が滞ってしまうことがあります。普通に悲しめない状態といえるでしょう。苦しいことですが、正常に悲哀を体験することができて、失われた対象からの拘束も解けるようです。
 クライン(Klein,M.)は、喪の作業の起源を乳児期の体験にあると考えました。クラインは、よい対象(Good object)の喪失を恐れて悲しみ心配する抑うつ的態勢(Depressive position)を償いを行うことで克服することが、喪の作業の本質であると述べています。自分の攻撃的衝動が直接愛の対象に向かうように感じられるので、強い罪悪感が生じ、全体としての母親を失うことへの恐怖が増大し、悲哀に似た状態になり、こうした抑うつ的感情の体験は、心的現実に対する理解につながり、自我の統合を促進するというのです。傷ついた対象を償い、保護しようという欲動は、相手をありのままにうけいれるという、より満たされた対象関係と昇華に道を開き、次第に統合性を高めていくことになります。悲哀の状態を通して、実際に失った愛する対象を復元しているのですが、同時に、自分の中の最初の愛する対象、つまりよい両親像も再確立しているのだと言っています。
 長い人生の中で、出会って別れては繰り返されることですが、それを通して心の中に確かなものを育て、成長していくといえるのかもしれません。
タグ:喪の作業
posted by MSCOスタッフ at 15:33| カウンセリング・キーワード