2010年12月25日

ストレスコーピング(Stress coping)  vol.3

ストレスコーピング

成長させてくれるストレス
ストレスというと、一般的にどうも悪いもの、無い方がよいものと思われがちです。カウンセリングでも、「ストレスを無くしてほしい」という訴えを聞く事は、とても多いように思います。

 しかし、「ストレス」という概念を提唱したH..セリエという生理学者は、実はストレスの良い側面にも言及しています。このことはなかなか一般には知られていないようなのですが、彼はストレス(stress)を「良いストレス(eustress)」と、「悪いストレス(distress)」に分け、「ストレスは生活のスパイスである」とも述べています。

 なんだかコレステロールの善玉、悪玉というのにも似ていますが、この場合の「悪いストレス」とは、例えば、過労、パワハラやいじめなどの悪い人間関係など、自分のからだやこころが苦しくなったり、嫌な気分になったり、やる気をなくしたりするような刺激やその状態のことをいいます。

 一方の「人生のスパイス・良いストレスeustress」は、一流のスポーツ選手がオリンピックを目指す場合など、自分の意欲を奮い立たせてくれたり、充実感を持たせてくれる刺激やその状態のことをいいます。こうした「良いストレス」が少ないと、人生は豊かにはならない、ともいわれているのですが、考えてみれば、恋愛などもこうしたストレスとして体験されていることは多いように思いますし、その中で我々が傷つきながら成長していくことが多いのも、一般によく体験されていることなのではないでしょうか。

 では、どうしたらストレスとうまく付き合っていきながら「人生のスパイス」を味わえるのか、ということなのですが、ここで問題になるのは、 (1)刺激(ストレッサー)の受け止め方(2)ストレス・レベルのバランス、が重要になってくるといわれています。

(1)ストレスの受け止め方
 これは、同じ刺激(ストレッサー)でも、受け止め方によって「良いストレス」になるか「悪いストレス」になるかが変わってくる、ということです。例えば、将来の目標や応援してくれる家族などの資源、対処能力(ストレス・コーピング)があって、『自分にも努力すればなんとかやれそうだ』という気持ち(自己効力感)のある受験生の場合、受験勉強も「成長を促す、良いストレス」として体験される可能性はとても高いと考えられます。一方で、『強制されためんどうな作業だし、努力しても自分の力では無理・無駄なんじゃないか』と思っていて、対処能力も「自分にもできそうだ」という手ごたえもない受験生にとっては、勉強はひたすら惨めで苦痛な、「悪いストレス」としてしか体験されない可能性があるといえます。

(2)ストレスのバランス
 ストレスと生産性を研究した実験の結果では、適当なストレスによって生産性は高まるのであって、ストレスは強すぎても弱すぎても生産性は上がらない、ということが知られています(ヤーキズ・ドッドソンの法則)。つまり、いかに能力のある人でも、絶対に無理な量の仕事をひどい環境の中でやらされれば、バランスを崩してしまって、本来あるパフォーマンスさえ発揮できなくなってしまう、ということです。また、逆に刺激が全くなかったりする状態、例えば意欲も能力もあるのに、簡単すぎる仕事を少ししか与えられない、といった状況だとしたら、せっかくの能力も持て余して生産性は落ちてしまいますし、興味や意欲もなくなってしまって、その人の貴重な成長する機会をも逸してしまう、ということにもなってしまうといえるのです。

★「人生のスパイス」を味わうために

 よって、我々がストレスとうまく付き合い、「人生のスパイス」を味わいながら成長に活かしていくためには、負担になりすぎない程度に関心のあることに挑戦してみるなど、いつも適度な刺激、「良いストレス」を持つように心がけておくことが大切かと思われます。一方で、「悪いストレス」についてはできるだけ少なくしていくことが一番ですが・・・なかなか現実はそうもいきませんし、逃げてばかりいても成長はしていきません。よって、現状のストレス状態を自覚しながらも、外界刺激の受け止め方を柔軟にしていくこと、またさまざまなストレスへの対処能力を培っていくこと等によって、ストレスへの耐性をつけたり、周囲の助けも借りながら目の前の問題を成長機会として転換することができるよう努力していくことが、非常に重要になってくるものと思われます。カウンセリングは、いわばそうしたプロセスを個別に、専門的に支援するもの、ということができるでしょう。
posted by MSCOスタッフ at 17:44| カウンセリング・キーワード