2017年08月11日

架空ケース:「依頼されたことができるかどうか不安だ」

huan.jpg

<架空のケースを元に、実際に起こりがちな悩みとカウンセリングのアプローチを紹介しています>
 上司に頼まれたことができるかどうか不安になってしまった、Dさん(20代後半 会社員 男性)。

 Dさんは、与えられた仕事はコツコツと取り組み、確実に結果を出してきました。その仕事ぶりで上司や同僚からの信頼は厚く、入社5年目の春に上司の推薦で主任に昇格しました。
 そんな中、上司から「これまでに担当した仕事の成果をまとめて、来月の会議で発表して欲しい」と頼まれました。この会議は来年度の予算決めの参考とされる重要な会議です。Dさんは早速資料作りを始めたのですが、次第に不安が大きくなり、憂うつな気分になってきてしまいました

悲観的な予測
 今、Dさんを不安にしていることを言葉にするように促すと、資料作りを進めていくうちに考えるようになったことを振り返りました。
 「これまで担当した仕事を振り返ってみましたが、こんなことを成果と言っていいのだろうか?求められている水準に達していないのではないか?という思いが頭をよぎるようになりました。とはいえ、成果が少ないと評価が下がり、予算が削られてしまうかもしれません。こう考えていたら、なかなか資料作りが進まなくなってしまい、このペースで間に合うだろうか?とさらに不安になってきて、やる気がなくなってしまいました」

 このように不安を喚起する思考の背景には、多くの場合“悲観的予測”が横たわっています。Dさんの場合は、「間に合わないかもしれない」「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」などです。悲観的な予測は不安の要因にもなりますし、エネルギーを現在から引き離し、未来へと向かわせます。Dさんは未来の不安が強くなり、今取り組むべき作業にエネルギーが向けられなくなっていました

不安解消のエクササイズ
 この“悲観的予測”に対して、まず、未来は100%予測できないという視点を導入します。未来は100%予測できないという視点を持つと、不安を喚起する思考を正当化しようとする態度から、自分を探求していこうとする方向へシフトしていきます
 探求へとシフトしたら、次に、Dさんの思考が自分を苦しめる結果になっていることや、不安にさせるのはDさんの思考であり、今のありのままの体験ではないことへの気づきを促します。そして、それはDさんにとってどういうことだと感じるか、時間をかけて考えてもらいます。

 Dさんは、「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」という考えの背景に目を向け、高く評価されたいという気持ちがあることに気づきました。そして、主任に昇格した気負いもあり、いつの間にか5年の実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたかもしれない、と考えました。
 また、予算のことは、会社の業績や事業展開によって変わるので、自分が責任を負うことではないと思い、余計な力が入っていたことに気づきました。

 さらにDさんは、悲観的な予測をすることは自分自身にとってどんな意味があるのだろうか?と考えました。すると、先ほど、実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたのかもしれない、と考えた時、一方でその考えを認めたくないという気持ちもあることに気づきました。そして、悲観的な予測というものは、もしかしたら、自分が見たくない感情や現実を覆い隠し、直面しないようにしているのかもしれない、という考えに至りました。

 Dさんは、今取り組むべき作業にエネルギーが費やせなくなっていたことを強く自覚し、資料作りに意欲を持てるようになっていきました。

※システム・センタード・アプローチの「不安解消のエクササイズ」を適用したケースです。
posted by MSCOスタッフ at 00:00| 架空ケース