2016年01月30日

全か無か思考

walking.jpg

 カウンセリングを受けに来られる方々の中によく見られる傾向に、「全か無か思考」があります。

 この「全か無か思考」とは、「all-or-nothing thinking」ともいいます。つまり、100%でなければ0と同じことだ、という極端な考え方のことです。「完璧主義」と言い換えてもよいかもしれません。

 たとえば「健康のため毎日仕事帰りに1駅前で電車を降りて家まで歩くのだ」と決めていたのに仕事が忙しくて疲れてしまい、つい億劫になって歩かなかった日が何日か続いたとします。そんなとき「また三日坊主になってしまった」「どうして自分はこんなに意志が弱いのだろう」と思ってがっかりしてしまい、「どうせ自分は何をやっても続かないのだ」とあきらめてしまう方は多いのではないでしょうか。

 でも、これから先ずっとできないかどうかはまだわかりません。仕事が一段落したら、気力体力が持ち直す可能性もありますし、そもそも「毎日歩く」という目標そのものを見直して「仕事が早く片付いた日だけ歩く」、「朝少し早く家を出て歩く」ことにするなど、本当は工夫次第でどのようにもできるはずです。

 本来の目標は「健康の維持、増進」なのですから、やり方を変えてもその目標が実現できればよいはずなのに、なぜ私たちは最初に決めた高い目標にこだわってしまうのでしょうか。それは、私たちの中に「万能感」というくせ者がいるからです。この「万能感」は、もともと私たちの中にある「何もかも思い通りになるはず」というファンタジーの残滓ではないかと思います。

 幼い頃、私たちの生きている世界はとても狭かったので、すべてが思い通りになるような錯覚を抱いていたのかもしれません。大人になるにつれて少しずつ、思い通りにならないこともあるとあきらめることを学んでいきますが、それでもどこかで「思い通りになるはず」という期待感を捨てきれずにいるのではないでしょうか。

 何かをやろうとするとき、私たちの中ではおそらく残滓であったはずの「万能感」がむくむくと大きくなり、「思い通りになるかもしれない」という期待感が生まれるのではないかと思います。周囲の状況が許さず、また自身のコンディションもありますから、そうそう自分が思ったようにはならないものですが、その思い通りにならないという事態が、思いのほか私たち自身を傷つけるようです。何度思い通りにならない状況を経験してもあきらめきれないほどに、人間にとってその欲求が強いものだからではないかと思います。

 そう考えると、私たちが最初に決めたやり方にこだわったり簡単にあきらめてしまうのは、自分自身が傷つかないようにするための無意識的な工夫といえるかもしれません。つまり「自分の思い通りにならないぐらいならあきらめた方がましだ」ということです。

でも、非現実的な欲求の実現にこだわるよりも現実的な目標を実現する方が、結果的にはずっと得るものが大きいのはいうまでもありません。「何をやってもうまくいかない」と思うときは、自分が「全か無か思考」にとらわれていないかどうか考えてみてはいかがでしょうか。
タグ:三日坊主
posted by MSCOスタッフ at 15:36| セルフメンタルケアのコツ