2015年11月03日

ドリームワーク(DreamWwork)

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夢をいかす「ドリームワーク」の技法について
 「ドリームワーク」は、80年代からユング派の分析家R.ボスナックが研究、実践を重ねる心理療法の技法です。毎年数カ国でワークショップやセミナーを開催し、日本でも毎年ワークショップが開かれています。R.ボスナックの事例からは、夢として表れた心と身体の深層が再体験される様が生き生きと伝わってきます。

 先日、「ドリームワーク」を体験する機会を得て、実際に自分の夢をワークしてきました。夢の詳細は省きますが、夢にでてきた若い女性のしなやかな身体の動きや隠遁生活をおくるお爺さんの味わいある笑顔などを、自分の中から表れたイメージとしてひとつひとつ丁寧に意識を向け、再体験しました。それは、日常の意識が慣れた意識の状態=「自分」と思っている以外の「自分」を感じ、それを理屈でなく身体の感覚で認め、受け入れるような体験でした。

 ボスナックの著書にあげられている夢とそのワークを簡単に紹介します(『ドリームワーク』2004.金剛出版)。夢は、米国の911の後、直接の被害はなかったものの、多くの人々と同様に大きな衝撃を受けた米国女性のものです。


 〈夢〉 『同僚と廊下を歩いている。テロリストのような男がいる。その男は私にドンとぶつかって通り過ぎる。私は縮みあがり怯えている。その男を追いかけている別のテロリストが私にぶつかり、何か突き刺された感じがして衝撃を感じた。実は、その男が私の着慣れたシャツのポケットに、何か錠剤のようなものを突っ込んでいったのだ。』

 ワークは、次のように進みます。はじめの段階でセラピストは、夢見手が夢の環境に戻れるように手助けします。夢見手は、ゆっくりと身体の感覚も使って、詳細に夢の環境を思い出します。
─彼女が、歩いている廊下は広い?灯りはどんな感じ?はじめに男を見たときは、どこにいた?どのくらい離れていた?

 第2段階は、夢見手の心理的・身体的な体験、その出来事が起こっている間の彼女の身体はどんな感じなのか、に焦点をあてます。
─彼女は恐怖で縮みあがり、しびれて無感覚になったその状況を感じ続けます。

 第3段階としては、「衝撃」の瞬間の触覚に焦点をあてます。
─身の縮む感じ、激しい無力感、むかむかして少し吐き気も感じます。

 第4段階は、ワークのもっともデリケートな部分。自分と異なる人物を体験します。「テロリスト」のような自分と異なる存在、この馴染みのない主体に、夢の中での存在の感じをゆっくりと詳細になぞり同一化し、身体感覚を使って体験します。
─彼女は、テロリストの、つまり恐怖を撒き散らす者の体験の中に入ると、「南極のように冷たい」と言いました。それが、彼女が体験した911の衝撃と恐怖を体現している「テロリスト」の存在の核にあると考えられます。

 第5段階。彼女は、セラピストから「熱い筋肉で覆われた冷たい氷」と同時に、自我が感じた縮みあがる感覚を感じるように促されます。
─彼女は、夢の中で体現された恐怖と氷の力の両方を身体全体で感じます。しばらくして、彼女はそこから脱し、「不思議だわ。どうしようもない感じがなくなって、何とかやれる気がしてきた」と言いました。声に力があります。夢の後半の「シャツのポケットに入れられた錠剤」は、「戦いの中で用いる道具を手渡されたようだ」とも言いました。


 ドリームワークによって、無力感に圧倒された体験をそれまでと異なる感覚で再体験し、そこからそれまでは意識になかった異なる体感が生まれ、どうしようもない無力感の状態から、自分に力を感じることができるようになっています。希望が導き出されたと言えるように思います。

 人が夢の中に何を見出すかはさまざまです。単なるレム睡眠の状態での脳の活動とも言えるでしょうし、起きている間の記憶のなごりととらえる場合もあります。とはいえ、夢は現実の体験と同様に感情や身体感覚をともなうリアルなものでもあります。夢とどう向き合うのかによって、自分の中にある豊かなイメージ群とそこにある想像力を、現実の自分に生かしていくことができるのだと思います。
posted by MSCOスタッフ at 01:06| カウンセリング・キーワード