2015年07月30日

大人のこだわりで、子どもたちから遊びを遠ざけていないか

所沢クリドラタウン

 子どもたちと、ドラマと造形のワークショップを行っている「所沢クリドラタウン」で、保護者の方たちに「子どもの育ち」について“遊び”の視点からお話をさせていただきました。
 それに先立って、ワークショップにも参加してみました。 http://blog.credra.org/?eid=1057696
 その時の感想は「体を使って遊ぶことは、大人にもこんなに楽しいことなんだ!」ということでした。そして改めて「現代の子どもたちは遊びから遠ざけられているのではないか」という思いを持つようになりました。

 今の子ども達は、幼児期のかなり早い段階から「楽しいこと」「気持ちの良いこと」よりも、「スキル習得」「学力向上」が期待されているように思います。「教育」が、生活の場の中で幅をきかせてきているのです。
 学童期の子どもたちにとって「競争」は、切磋琢磨し合う大事な機会であり、自己有能感や自信をつけていくのに大切ではありますが、あまりに早期から行なわれてているため、競うことに疲弊しているように見えることもあります。そして、勝ったり負けたりすることによって生じる様々な葛藤を避けるため、過度に気をつかい合い、自分をありのままに表現することをせずその場をやりすごそうとしているように見えるのです。

 だからこそ幼少期に思いっきり“遊ぶ”ことが必要だと思いますが、実際には遊んでいるようで遊んでいない。そういう現象が起こっているように思うのです。その一因は大人の接し方にあります。大人は子どもにとっての「環境」なので、大人の「こだわり」「構え」が子どもの「枠組み」として機能してしまうのです。

【子どもたちから遊びを遠ざけてしまう大人のこだわり 3つ】
(1)「言葉」に頼りすぎていないか?
 子どもは、自分で言った内容と行動を一致させることが、まだ難しいことが多いのです。大人から言われたことに対しても「わかった!」と返事したとしても、実は理解しておらず、行動にうつせないということがしばしば起こります。また、子どもは「気持ち」を「言葉」で言い表すことが難しく、「行動」や「体の症状」で表すことも多いのです。

(2)「完ぺき」を目指しすぎていないか?
ちゃんと遊べるようにしっかりしたもの、表現しやすいようにたくさんのものを用意してあげる・・・しかし「ありすぎる」ことで、実は「想像力」が生まれにくくなっているかもしれないのです。
また、大人が先回りして「もっとこうした方がいいよ」と本物に近づけようとしてはいないでしょうか。完成度や本物らしさよりも、「その子らしさ」が大切なのです。その子が「もっとこうしたいんだけど」と言ってきたときに、大人は助けてあげたらよいのです。

(3)「一人で何でもできるようにならないといけない」と思い込んでいないか?
私たちは誰でも、何らかの助けを得ながら生きています。「助けてもらうこと」と「自分でやること」のバランスをとり、他者とともに生きていくこと、それが本当の自立だと思います。

 こういった“ちゃんとする”というくびきから解放して、充分に“遊ぶ”ことがとても重要なのです。遊びの中では、「助けを受け入れる力」と「自分で工夫する力」の2つが培われます。子どもにとっては“遊び”は育ちを支えるのに必要不可欠なものなのです。そして「遊びの重要性」は生涯にわたって大切なものであることが様々な臨床場面においても語られています。

 クリドラタウンでは、子どもも大人も一緒になってとても楽しそうに活動していました。そして、保護者の皆さんが、口をそろえて「子どもたちはクリドラタウンに行くのを楽しみにしているんです」とお話されていたのが印象的でした。子どもは楽しいと自ら取り組み、生き生きと活動し、自信をつけていくものです。子どもが遊べるようになるためには、大人も一緒に遊んで、楽しんでいる姿を見せてあげるのが良いのではないでしょうか。大人の中の「遊べる心」も大切にすること。そのことを日々の臨床でも忘れずにいたいと改めて感じた一日でした。


<所沢クリドラタウンスタッフから>
 私たちは遊びを通して、集中力や身体コントロール力、創造性や表現力・コミュニケーション力が自然に身につくようなワークショップを行なっています。
お話しをしていただいた「“遊び”を遠ざけてしまうこだわり3つ」に対しては逆のアプローチを常に考えています。
・「言葉」については、感覚や身体に働きかける活動や非言語的なコミュニケーションを用いた活動を積極的に取り入れています。
・「完ぺき」については黒い素材だけで工作するなど、材料や時間に制限をかけています。制限があるから工夫する発想力が生まれるのです。そして出てきた発想を受け入れそれを更に膨らませるような声かけをしています。
・「一人で何でもできる」については、他の人が作った素材を使って作品を完成させたり、協力しないとできない活動を数多く入れたりしています。人の意見や作ったものと、自分の意見や作ったものが混じりあう面白さや、みんなで1つのものを造り上げるという体験を大事にしています。
 今回“遊び”の重要性を、臨床心理の言葉で説明されたことが、私たちの取り組みに裏付けをいただいたようで大変心強く思いました。ありがとうございます。
posted by MSCOスタッフ at 00:14| オフィス外での活動