2014年12月27日

見落とした大きな白熊 

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 ある研修会で、私たちは短いビデオの映像を見ました。講師から指示されたのは「これからお見せするビデオの中で、バスケットのボールが何回パスされたか数えて下さい」というものでした。ビデオには7,8人の若者がバスケットボールのコートを縦横無尽に動き回りながら、ボールのパスを繰り返す様子が映し出されていました。映像がスタートすると、入り乱れる人の動きに惑わされないようにしながら、私は素早いボールの動きに目を凝らし、「1,2,3…」と数えていきました。ほんの12,3秒ほどの映像が終わりました。正解は24回。無事に正解し、ホッとしているところに再度講師の言葉です。
 「では、先ほどの映像をもう一回、今度は気楽に見て下さい」とのこと。先ほどの映像が巻き戻され、先頭から再度流れました。すると、会場から「え〜!」という驚きの声が。なんと、その映像の中では、大きい白熊の着ぐるみがムーンウォークで若者の間を悠々と行ったり来たりしていたのです。パスの回数を数えている間、私は全くその着ぐるみに気づきませんでした。驚きの声がわいたのは、会場の多数の参加者が私と同じ体験をしたためだろう思います。自分の目に見えているものと、実際そこにあるものとがこんなに違うということを、身をもって実感した体験でした。

 私たちは自分の周りで起こる様々な状況を、ビデオカメラで撮るようにそのまま取り入れるのではなく、特定のものだけを取捨選択して取り入れています。関心のあること以外は目に入らないので、ボールの行方を気にした時、普段であれば見落とすはずのない大きな熊が見えませんでした。恋愛がスタートしたばかりの時期は、恋人の良い面ばかりが目に入るのも同じ作用でしょう。

 では、自分の心が弱くなっている時、たとえば自信を失っている時や何かに不安・緊張を感じている時などはどうでしょう。人生に恵まれず、明るい将来が見えないと嘆くある方は、自分がホームに着くと乗りたい電車のドアが閉まる、信号が赤になる、旅行で雨が降った、図書館が休館日だった、予約をしたのに歯科医院で待たされたと数々の不運を挙げ、さらに気持ちを落ち込ませていました。きっと、電車に間に合った時も青信号だった時も、旅先で晴れた日もあったでしょうが、そのような情報は記憶に残らず、自分が不運であることの確信を強める情報だけが選ばれてしまうようでした。
 そのような状態に陥っている時は、なかなか自分の捉え方の傾向に気づきにくいものです。いちど立ち止まって自分の捉え方に何かクセはないか、あるいは第三者の意見を聞いてみると良いと思います。
posted by MSCOスタッフ at 01:03| 心理エッセイ