2014年11月24日

個人化(personalization)

自分のせいだと思い込む

 認知行動療法では、自分自身の非現実的な思い込みに気づき、それを修正していくことを目指します。非現実的な思い込みにはいくつか典型的なものがありますが、今回はその中の「個人化(personalization)」を取り上げてみたいと思います。「個人化」とは、「自己関連づけ」とも言われ、他者の否定的なふるまいをすべて自分のせいだと思い込むことを言います。

「相手の気分を自分のせいにしていませんか」

 たとえば、家族やパートナーの機嫌が悪いとき、皆さんはどんなふうに考えるでしょうか。「私が何かしたのだろうか」と不安になり「きっと、私のあのときの態度が良くなかったのだ」と考え「だから私のせいだ」と思ったことが誰でも一度はあるはずです。

 実際、他者の不機嫌が自分と関係していることもあるでしょう。でも、まったく関係がないことも実は多いものです。たとえば、学校や職場で嫌なことがあったとか、大きなミスをしてしまって、その後始末をどうしたものかと悩んでいるとか。

 自分と関係のないことで相手が不機嫌になっているのに「私のせいだ」と思い込むのは、自分自身に対する攻撃です。私たちは、何かにつけ自分を攻撃しようとします。それは、誰の心の中にも「受け入れたくない自分」がいるからではないでしょうか。自分で自分を攻撃することで、自分の嫌いな部分をないものにしようとするのかもしれません。   

 また、相手が不機嫌な態度でもって自分を責めているように感じる、つまり相手が自分を攻撃しているように感じられることもあるでしょう。それは、前述のように思い込みの場合もあれば、実際、相手が意図的にそのように振る舞っていることもあります。でも、相手の不機嫌の原因が自分に関係があってもなくても、その気分自体を生じさせているのは相手自身なのですから、それは相手の問題です。いくら相手から不機嫌の責任を取れ、と言われたところで、私たちにはどうすることもできません。その人の感情をコントロールできるのはその人自身だけです。でも、私たちは、何故か相手の感情に対して責任を取ろうとするところがあります。それはもしかしたら、誰でも他者を自分の思い通りに動かしたい、動かすことができるという万能的な空想を抱いているからなのかもしれません。
 
 身近な人あるいは自分に関係のある他者の不機嫌な表情や気持ちの沈んだ表情は、私たちを不安にさせます。それは、他者を思い通りに動かすことができるという万能的な空想とは裏腹に、誰も自分の思い通りにはならないことがわかっているからでしょう。自分の思い通りにはならない、予測できないことは人を不安にさせます。他者を思い通りに動かすなんて非現実的だとわかっていながら、人は自身の不安を軽減させるために自分の努力次第で相手の気分を変えることができるはずだ、と思い込もうとするのです。
posted by MSCOスタッフ at 22:50| カウンセリング・キーワード