2019年07月17日

コラージュ療法と岡上淑子

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 少し前になりますが、東京都庭園美術館にて「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇跡」を見て参りました。岡上淑子さんについてご存知の方はそう多くはないでしょう。というのも、制作期間は1950年から1956年というわずか6年間という短いものですが、その間におよそ100点のコラージュ作品を制作されました。
岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟
 1950年といえば、終戦から5年しか経過していません。岡上作品にも戦争の影響を大いに受けていました。【廃墟の旋律】では、瓦礫から延びる手と楽器を奏でる女性像が印象的です。瓦礫に埋められ助けを求めて伸ばされた手を誰も救うことは叶わない、けれどそれに対して鎮魂歌を奏でているかのようです。岡上作品には女性と手が多用されている印象を受けました。
 彼女自身、救いを求める手を延ばすと同時に、新たな時代を迎える女性像が投影されているのではないではないでしょうか。実際、後期の作品となると、ふんだんなレースを使ったドレスを身に纏い(ただし顔は機械や昆虫、陶器等で隠されている)空中に浮遊する女性作品が多くなります。自由に発言をするには、匿名性が必要であることは現在のSNS等にも見られる現象のようにも考えられます。

 ここまで書いてきた、『コラージュ』という言葉も、実は耳慣れないかもしれません。コラージュ(collage)とは、膠(にかわ)による貼り付けという意味のフランス語です。コラージュはもともとピカソらによって芸術の一つの技法として20世紀の初めに登場してきたという背景があります。芸術家が自分独自のものを創作するのではなく、社会的産物である既成のイメージを切り貼りして作品を作るという発想の転換は。以後の20世紀芸術に大変革を与えることとなりました。

 芸術の世界で花開いたコラージュは、1970年代頃から、芸術(表現)療法のひとつとして、コラージュ療法が行われるようになってきたと言われています。コラージュの方法は非常に簡単明瞭で、雑誌やパンフレットなどの絵や写真・文字などをハサミで切り抜き、台紙の上で構成し、貼り付けるだけです。簡易なものですから、幼児から老人まで、基本的にはどの年代の方にも導入が出来ます。
 そして言葉で表現をすることや、内面を掘り下げていくことが難しい方でも、『作品』という形で自分自身を少し離れたところから眺めることができるのです。作品の意味するところはその時にはわからなくても、不安や問題点等、作品を通して理解し治療を続けることが出来ると言われています。また、作成そのものに自己治癒的な面があります。

 では、何のためにコラージュを作るのでしょうか?それは「カウンセリングの目的とは?」という問いかけとも繋がっています。カウンセリングの目的のとして、自己表現を促すことが挙げられます。自己表現が出来れば、自分自身の問題に気付くことが出来ます。そして、気付きを得ればその解決方法はその人自身が知っていることに気付くでしょう。カウンセラーは、時と場所を提供して、それを援助する存在なのです。

 岡上淑子さんは、人生において最も多感な時期に作品の制作を行い、そして結婚という現実と共に制作を終えました。不安やストレス、ある種の問題を抱えている時こそ、自己表現をしていく作業が必要と考えられます。そしてそれを終えた時には、現実に戻っていく時期となるのでしょう。そのようなお手伝いをカウンセラーとして出来ましたら幸いです。
タグ:コラージュ
posted by MSCOスタッフ at 00:14| 心理エッセイ