2018年05月13日

メンタライゼーション(Mentalization)

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 「メンタライゼーション」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。少し聞きなれない言葉かもしれません。
「メンタル」から派生した言葉で、メンタルの動詞形が「メンタライズ」です。
 意味は「心にする」「心を想像する」といったところです。メンタライゼーションとは「自己・他者の行為を、精神状態(欲求・感情・信念)に基づいた意味のあるものとして理解すること」と定義されます。行為には、発話や態度も含まれます。
 「あの人はどういう気持ちからああいう行動をとったんだろう?」と想像したり、「どうして私はあの人に対してイライラしてしまうのだろう?」と自分を省みたりする、誰でも日常的に行っている心の作業のことです。

 メンタライゼーションが行われている身近でわかりやすい例は、赤ちゃんに対するお母さんの心の動きです。赤ちゃんは言葉で表現することができないので、泣いて訴えることしかできません。お母さんは赤ちゃんの状態や泣き方を見ながら、何が起こっているのか、なぜ泣いているのかを心を使って考えます。そして赤ちゃんのニーズをくみとって対応します。(おしっこをしてオムツが濡れて気持ち悪くて泣いているんだ。オムツを替えてあげよう)


 健康的なメンタライジングモードでは、行為は、精神状態と関連づけられて理解されます。精神状態は、外的現実を反映していますが、外的現実とは分離しているものとして認識され、複数の見方でとらえることができます。

 例を挙げてみましょう。朝、出社して同僚に挨拶をしたとき、その同僚の口調や態度が無愛想に感じられたとします。「何か自分がこの人の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか」と心配になって考えてしまうことでしょう。しかしいつも通り挨拶をしただけですし、前日のことを振り返ってみても特に相手を不快にさせた覚えがないとします。もう一度よく同僚の様子を見てみると、疲れているようですし、顔色もあまりよくありません。(もしかして具合が悪いのかな…)そう思って、「○○さん、今日調子悪いですか?」と尋ねると、「実は朝から頭が痛くて…」とうなずいています。「お大事にね」と言ってその場を離れることができるでしょう。
 このように、相手の行為(発話や態度も含む)に対して複数の見方を検討することができるのが健康的なメンタライジングモードだと言えるのです。


 しかし、メンタライゼーションのモードは状況によって変化します。強いストレスを受けているときやピンチのときには機能不全を起こして、「非メンタライジングモード」が表れやすくなります。

◎心的等価モード
心=外的現実。心で思ったことがそのまま外的現実でもあると体験される。例えば夢、フラッシュバック、パラノイド的妄想に見られる。
◎ふりをするモード
心を外的現実から分離したものとして認識しているが、現実と柔軟に結びつけることができず、空想、観念、概念などの世界に入り込み、現実との接点を失っている。心理学用語の濫用として表れることもある。
◎目的論モード
願望や感情のような精神状態は精神状態として認識されず、直接的行為として表出される。行動化とも言われる。このモードでは、行為と有形物のみが重要であるととらえられる。

 こういったモードでは健康的なメンタライゼーションを行うことが難しい状態にあると言えます。これを健康的な状態に戻していくこともカウンセリングで行うことの一つです。


 メンタライゼーションとカウンセリングは切っても切れない関係です。カウンセリングにおいては「心の中で何が起こっているかに注意を向ける作業」が中心になるからです。クライエント自身も、カウンセラー自身も、ともに自分の心の動きに目を向け、言葉にして表現したり、相手に伝えたりする交流が行われます。カウンセリングはメンタライゼーションの連続です。

 メンタライゼーションの作業がつらく感じることもあるかもしれません。悩みや苦痛の根底にあるものを言葉にするということは、決して楽なことではないからです。しかし、カウンセリングにおいてメンタライゼーションが重要視されるのは、メンタライゼーション力の成長が、主体感覚の回復をもたらし、感情を制御する力を育てるからです。

 カウンセラーは、クライエントが安心してメンタライゼーションの作業を行えるよう、「安心基地」として機能できるような関係を築くことをしていきます。この関係を基盤にして、クライエントは自身や他者の心の動きを探求することができるようになるのです。

参考文献:上地雄一郎『メンタライジング・アプローチ入門 愛着理論を生かす心理療法』北大路書房 2015年

posted by MSCOスタッフ at 14:53| カウンセリング・キーワード