2017年08月30日

整骨とカウンセリング

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 先日、左の股関節が痛くなり、お尻や膝まで痺れてきたので整骨院に行きました。初回、まず、どこがどんな感じに何をすると痛いか、ということを伝えると、何かきっかけがあったのかときかれました。特に思い当たらないけど、前からよく違和感はあったと言うと、いろんな動きをさせられて、これは痛いか、どこから痛むかなどときかれました。
 それに答えていくと、最終的に先生から、骨盤がゆがんでいるので右足と左足の長さが違う。長い右足に左足を合わせるから左足の外側の筋肉が緊張し、そうすると逆に内側の股関節は縮こまるという状態が続いている。そのせいで左の股関節が痛くなっているのだろう、という見立てを伝えられました。
 お尻やひざがしびれているのは、股関節が痛いのをかばうと、周りの筋肉を代わりに使うようになり、そこを無理に使いすぎて硬くなっているからだろうと言われました。さらにその太ももから膝にかけての筋肉がつながっているお腹の内側にある腸腰筋も緊張していると言われました。
 治療ではまず凝っている筋肉をほぐされ、緊張しているところを緩められ、自宅でできるストレッチを教わり、また1週間後に来てください、と言われて終わりました。

 終わってから、これはカウンセリングに似ているなと思いました。違いは身体のことを扱うのか、心のことを扱うのかです。
 どちらも困った状態に対して、いつからそれは起きていて、何かきっかけがあるかきかれます。そして、なぜそうなっているのか、何が起きているのか見立てながらそれに応じた質問をしていきます。
 どちらも患者(来談者)が訴える現象は一つでもいろいろな部分がつながって影響しているからです。それから、起きていることの理解を伝え、固まって本来の動きをしていないところを緩めていくと、本来の自分の動きを取り戻していきます。
 どちらも行くと少し元気になります。でも一度では変わりません。そして一番大事なのは、どちらも他の人が代わってやってあげられないということです。自分の身体、自分の心には自分自身で目を向けて、気づいて、取り組んでいかないとよくならない、変わらない、ということです。
 私は、毎週整骨院に通い、ストレッチを続け、日常生活でも荷物を持つ手を変え、気づいたら左股関節の違和感はなくなっていました。そんな風にカウンセリングも自分の心に向きあって取り組んで行くことで、変化していくのです
posted by MSCOスタッフ at 23:01| 心理エッセイ

2017年08月11日

架空ケース:「依頼されたことができるかどうか不安だ」

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<架空のケースを元に、実際に起こりがちな悩みとカウンセリングのアプローチを紹介しています>
 上司に頼まれたことができるかどうか不安になってしまった、Dさん(20代後半 会社員 男性)。

 Dさんは、与えられた仕事はコツコツと取り組み、確実に結果を出してきました。その仕事ぶりで上司や同僚からの信頼は厚く、入社5年目の春に上司の推薦で主任に昇格しました。
 そんな中、上司から「これまでに担当した仕事の成果をまとめて、来月の会議で発表して欲しい」と頼まれました。この会議は来年度の予算決めの参考とされる重要な会議です。Dさんは早速資料作りを始めたのですが、次第に不安が大きくなり、憂うつな気分になってきてしまいました

悲観的な予測
 今、Dさんを不安にしていることを言葉にするように促すと、資料作りを進めていくうちに考えるようになったことを振り返りました。
 「これまで担当した仕事を振り返ってみましたが、こんなことを成果と言っていいのだろうか?求められている水準に達していないのではないか?という思いが頭をよぎるようになりました。とはいえ、成果が少ないと評価が下がり、予算が削られてしまうかもしれません。こう考えていたら、なかなか資料作りが進まなくなってしまい、このペースで間に合うだろうか?とさらに不安になってきて、やる気がなくなってしまいました」

 このように不安を喚起する思考の背景には、多くの場合“悲観的予測”が横たわっています。Dさんの場合は、「間に合わないかもしれない」「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」などです。悲観的な予測は不安の要因にもなりますし、エネルギーを現在から引き離し、未来へと向かわせます。Dさんは未来の不安が強くなり、今取り組むべき作業にエネルギーが向けられなくなっていました

不安解消のエクササイズ
 この“悲観的予測”に対して、まず、未来は100%予測できないという視点を導入します。未来は100%予測できないという視点を持つと、不安を喚起する思考を正当化しようとする態度から、自分を探求していこうとする方向へシフトしていきます
 探求へとシフトしたら、次に、Dさんの思考が自分を苦しめる結果になっていることや、不安にさせるのはDさんの思考であり、今のありのままの体験ではないことへの気づきを促します。そして、それはDさんにとってどういうことだと感じるか、時間をかけて考えてもらいます。

 Dさんは、「求められている水準に達していないかもしれない」「評価が下がってしまうかもしれない」という考えの背景に目を向け、高く評価されたいという気持ちがあることに気づきました。そして、主任に昇格した気負いもあり、いつの間にか5年の実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたかもしれない、と考えました。
 また、予算のことは、会社の業績や事業展開によって変わるので、自分が責任を負うことではないと思い、余計な力が入っていたことに気づきました。

 さらにDさんは、悲観的な予測をすることは自分自身にとってどんな意味があるのだろうか?と考えました。すると、先ほど、実績以上の高い評価を望む気持ちが生まれていたのかもしれない、と考えた時、一方でその考えを認めたくないという気持ちもあることに気づきました。そして、悲観的な予測というものは、もしかしたら、自分が見たくない感情や現実を覆い隠し、直面しないようにしているのかもしれない、という考えに至りました。

 Dさんは、今取り組むべき作業にエネルギーが費やせなくなっていたことを強く自覚し、資料作りに意欲を持てるようになっていきました。

※システム・センタード・アプローチの「不安解消のエクササイズ」を適用したケースです。
posted by MSCOスタッフ at 00:00| 架空ケース

2017年08月10日

不安解消のエクササイズ

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 先日、システム・センタード・アプローチ研究会が主催するセミナーに参加しました。このセミナーは、イボンヌ・アガザリアンという、アメリカの心理療法士が創始したSCT(Systems-Centered Training/Therapy/Approach “http://www.systemscentered.com/”)の理論を学びながら、グループや個人のシステムについて理解し、自己理解と他者理解を深めることを目的としたグループ体験をするというものでした。

 SCTでは、気持ちがどのようにして生じたか、ということを重要視します。私たちは気持ちを言葉で語りますが、気持ちを表す言葉には「楽しい」「怒っている」など、感情をシンプルに表現するものと、「捨てられた」「無視された」など、その人の体験から生じた気持ちとそれにまつわるある種の考えや解釈の両方が合わさった複雑なものとがあります。
 実際の体験そのものから生み出される気持ちと、「捨てられた」とか「無視された」といった体験の解釈によって生み出される気持ちは異なっています。また、「捨てられた」とか「無視された」といった枠づけが生じると、その人は自動的に犠牲者の役割を取ることになります。  
 SCTでは、これらの枠づけ(防衛)をほどいて、ありのままの感覚的な体験からくる気持ちと、思考に誘発されて出てくる気持ちとの違いをわかるように探求し、まだ見ぬ新しいものを発見することを目指しています。

 このセミナーではいくつかのグループエクササイズを体験しました。なかでも「不安解消のエクササイズ」は不安な気持ちになった時に役に立つのではないかと思いました。
 このエクササイズでは、不安がどこから来ているのかを探し出し、思考に誘発されて出てくる気持ちと、私たちが本来注意を払うべき本物の体験との違いを見出そうとします。
 私たちが現実を確認しないまま、悲観的な予測を説明的に語る時、不安は高まってしまいます。また、楽観的な予測は、私たちが現実検討することから遠ざけてしまいます。SCTでは、不安は現実を間違って解釈しているシグナルだと考え、悲観的・楽観的予測は、私たちの探求心や一般常識を奪ってしまうと考えます。
 まず、「今、あなたを不安にしていることを言葉にしてみましょう」という問いかけがあり、自らの現実をチェックするように要求されます。
不安は、だいたい、次の3つの出所の中のどれか一つから湧いてきます。
 ・不安を喚起するような考え(悲観的な予測や、他者が考えていることに対する恐れ、など)
 ・あまりなじみのない身体感覚
 ・不確かさそのもの
 例えば、「友達に知れたら、嫌われるかもしれない」というのは、不安を喚起する思考です。不安にするのはその思考であって、現在の体験に対する防衛であり、今のありのままの体験ではないのです。
 エクササイズでは、「あなたは未来を100%予測できるのですか?」という介入をし、自分自身の思考が自分自身を苦しめる結果になっていることへの気づきを促し、さらに、どう感じるかを探求します。悲観的な予測がもたらす代償や、遠ざかっていた今のありのままの体験に目を向けていきます。

 好奇心を持ってまだ知らない新しいものに出会うことが、私たち人間のシステムが発達するための第一歩だ、とSCTは主張しています。私は、このセミナーに参加し、いつもの慣れ親しんだ考えやパターン、思い込みのために不安やあきらめの気持ちに支配され、前に進むチャンスを逃してしまうことがあると再認識しました。好奇心を持ち、未知のものとの出会いを楽しむことができたら、人生が豊かなものになるのではないかと思います。

 セミナーで学んだことをもとに、「依頼されたことができるかどうか不安だ」と感じている20代後半の会社員の架空ケースを別記事でご紹介します。

(参考文献:イヴォンヌ・M・アガザリアン著 鴨澤あかね訳 『システム・センタード・アプローチ −機能的サブグループで「今、ここで」を探求するSCTを学ぶ−』 創元社)
posted by MSCOスタッフ at 17:55| 心理エッセイ