2016年12月29日

感覚を大切に

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 子どもたちにドラマと造形のワークショップを行っている「所沢クリドラタウン」で、昨年に引き続き保護者の方たちと「子どもの育ち」についてのセミナーの機会をいただきました。今年は「感覚」をテーマにお話しいたしました。

 脳の発達にはさまざまな「感覚情報」が必要不可欠だということをご存知ですか。「感覚」と言うと、真っ先にイメージするのが「五感」。いわゆる「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」です。これらの五感は、どこで何を感じているのか意識しやすく、「今感じている」ということも自覚しやすいと言われています。

 また、感覚の中には「無意識に使われている」ものもあります。「触覚」は、五感の中で他の4つに比べると本能に強く関わっている感覚で、無意識に反応する部分があります。触ったものの大きさや形、素材を判断するときに知的に情報処理を行う(識別系)のほかに、自分に触れたものに対して「エサだ!つかまえるぞ!」もしくは「敵だ!逃げなければ!」というように「本能的に」感じ取って反応するところ(原始系)があります。
 そして、その他に「無意識に使われている感覚」として、「平衡感覚(前庭覚)」と「固有覚」があります。

 平衡感覚(前庭覚)は揺れや回転重力感を感知する感覚のことです。体勢が崩れたり、転んだりしないように、バランスをとるのが主な働きです。眼球運動とも関係しています。クルクル回転した後に目が回るのも、実はこの感覚が大きく関係しています。また、平衡感覚(前庭覚)は自律神経とも関わりがあり、情動の変化にも影響を与えています。

 固有覚は、筋肉や関節の動きを感知する感覚のことです。目を閉じて、上に向けた手のひらの上に1冊本を置いたときと、5冊本を置いたときと、冊数の違いがわかるのは、重さの違いを認識する感覚があるからです。この重さの違いを感じ取るセンサーこそ、固有覚なのです。

 体を動かす遊びや、料理や創作などの活動は、いろいろな感覚を使う機会を与えてくれます。知識として知っていたとしても、実際にやってみないとわからない「実感」というものがあります。 わかったつもりにならず、今、目の前にあるものをそのまま感じることに大きな意味があると思います。
 例えば料理。ジャガイモ一つとっても、実際に見て、触って、においをかいでみなければわからない、ジャガイモの実感があると思います。いろいろな形があることを知り、肌触りを知り、畑からとれたばかりの土のにおいを知るでしょう。手に取ってみて重さを感じることもあるでしょう。茹でているときにもうもうと上がる湯気の熱さに驚きながら、やけどをしないように気をつけることを学ぶでしょう。体験してみて、自分の中のどんな感覚が動いたのか、感覚によって生じた自分の中のさまざまな気持ちの動きや考えを大事にしてほしいと思うのです。

 「知識」それ自体はとても大切なのですが、ときに知識があるすぎるせいで、体験から遠ざかってしまう可能性もあるのではないかと思います。体験から遠ざかると、感覚がそぎ落とされてしまうのです。たまには知識はわきにおいて、自分の体験に没頭してみるのも悪くないものです。
 自分が体験した感覚には「正解」も「不正解」もありません。どれも「本物」です。その本物の感覚を大切にしていけるとよいと思うのです。子どもだけでなく、子どもと一緒に体験する大人も、感覚を大切にし、体験に心を開いてみてください。大人が楽しそうにしていると、子どもも安心して楽しむことができるのですから。

 感覚がうまく統合できず、日常生活に差しさわりが生じている場合は、より専門的な支援として「感覚統合療法」というものもあります。アメリカの作業療法士エアーズが考案した療法です。感覚統合療法では、子どもが「楽しい」と思える活動が取り入れられています。作業療法士が、感覚入力を整理し、子ども自身がいろいろなことに気づいたり、適切に体を対応させていけるよう、工夫して関わっていきます。
posted by MSCOスタッフ at 22:34| オフィス外での活動